「最近、相場の重要な節目を抜けたと思って仕掛けると、よく逆にもっていかれるんだよな~」とは、ある市場関係者の方の弁。筆者も同感です。
たとえば、長らく強い上値抵抗=レジスタンスとなっていた水準を上に抜けたと思って買い仕掛けると、そこから一気に売り圧力が強まる。あるいは、逆に強い下値支持=サポートとして機能していた水準を下抜けたと思って売り仕掛けると、そこから一気に買い圧力が強まるといったようなケースです。
同じようなことは、用心のため損失限定のストップロス注文を出していたような場合にも経験することがあります。たとえば、一目均衡表の日足「雲」上限を上抜けたので新規の買いを入れ、用心のために「雲」上限の少し下にストップロスを置いていたら、ほんの一瞬、市場価格が「雲」上限を割り込んでストップロス注文が成立。ところが、ほどなく相場は切り返し、後にグングンと値を切り上げていった...などというケースです。
下の図をご覧ください。9月17日に1.3172ドルの高値を付けて反落したユーロ/ドルは、連日のごとく下値を切り下げ続け、9月27日に200日線とほぼ一致する水準で安値を付け、ようやく下げ止まりました。
この日はNYの引けにかけて相場が盛り返し、最終的には「陽線」となります。「やはり200日線は強い下値支持であり、そこで下げ止まって前日終値比プラスの水準まで持ち直したのだから、今後はある程度の戻りを試すのではないか...」。そう考えて、ユーロ/ドルを1.2900ドルで買ったとしましょう。さて、この場合、ストップロス注文は一体どのあたりの水準に置いたらいいのでしょう?
普通考えるのは、やはり200日移動平均線の水準ですね。このときの200日線はほぼ横ばいで推移していましたから、9月27日に200日線が位置していた水準とほぼ同じとなる1.2825ドルあたりということになるでしょうか。200日線は非常に強い下値支持であるがゆえに、仮に同水準を下抜けてしまった場合には、もはや相場は下だろうと考え、そこで損失を限定するわけです。
結果は、ご覧の通り。その後のユーロ/ドルは、10月1日に一時的にも200日線を下抜けたうえ、相場の中心=基準とも言える一目均衡表の「基準線」をも下抜ける場面を垣間見ました。よって、ストップロス注文は成立です。しかし、それはほんの一瞬の出来事であり、ほどなく切り返した相場は後に1.3000ドルをも超える水準まで値上がりすることとなりました。投資家としては非常に悔しい思いです。
この場合で言いますと、200日線ならびに「基準線」の少し下方で待ち構えているのが、俗に言う「ストップロス・ハンター」。ユーロ/ドルを買い持ちしている投資家の多くは、やはり200日線や基準線の水準か、それより少し下にストップロスの売り(逆指値)注文を置いているはずです。そこを狙ってより安く買い仕込もうとする=ストップロス・ハンティングを仕掛けてくるケースというのがままあるわけです。
では、この場合は一体どこにストップロスを置いておけばいいのでしょう。それは、もう一つの重要な節目である1.2800ドルの少し下ということになるでしょう。仮に同水準を下抜けてしまった場合には、相場自体が売り優勢の展開を強めることとなり、さすがにそこから切り返すことは難しくなると考えられます。つまり、ストップロス・ハンティングにも限界があるのです。よって、ストップロス注文というのは相場の節目よりも少し余裕を持たせた水準に置くのが望ましいということになります。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役