ECBが先の政策理事会において南欧国債の購入方針を決定し、当面は欧州金融市場の安定が保たれやすくなったとの判断から、このところ市場ではユーロ買い優勢の展開が続いています。また本日(9月12日)、独連邦憲法裁判所において「欧州安定メカニズム(ESM)は合憲」との判断が下される可能性が高まっているとの見方から、ユーロ/ドルを買い戻す動きも目立っており、目下は強い上値抵抗と見られる200日移動平均線(200日線)を上抜けるほどの強い動きになっています。
ただ、目下のユーロ/ドルの戻りには「ドル安」の側面が強いことも否定できず、また仮にESMの合憲性が晴れて認められたところで、それはユーロ安定化に向けた最低必要条件を満たすに過ぎません。さらに、一部報道ではギリシャ支援の先行きに暗雲がかかり始めているとも伝えられていますし、そもそもECBによる南欧国債購入の実現性はいまのところまだ不確かなものです。
そして何より、2012年7月下旬あたりから継続してユーロが買い戻されてきたことにより、相場に少々過熱感が生じてきていることも見逃せない事実と言えます。
下の図からは、過去1年間のユーロ/ドル(日足)の価格推移とテクニカル分析指標の一つであるRSIの推移が確認できます。このRSIとは、直近の一定期間(下の図は14日間)の各時点における終値ベースの変動=上昇幅の累計と下落幅の累計を合計し、そのうち上昇幅の累計が全体の何パーセントを占めているかを示すもので、要は直近の一定期間において「上昇」と「下落」のどちらの勢いが強いのかを、その数値から見て取ろうとするものです。仮に、直近の一定期間における終値ベースの変動がすべて「上昇」であったならRSIは100、逆にすべて「下落」であったならRSIは0(ゼロ)ということになります。
そして通常は、このRSIが70~80以上になると相場は「買われ過ぎ」、逆にこのRSIが20~30以下になると相場は「売られ過ぎ」であると判断されます。下の図では、楕円の点線で示したところに「買われ過ぎ」、「売られ過ぎ」のサインが出ており、多くの場合において、その前後のタイミングで当面の高値、あるいは安値を付けて相場が反転しているという事実が見て取れます。
このRSIは7月下旬に25を下回る水準で底を打って反転し、足下では75前後の水準にまで高まってきています。つまり、通常で考えれば、そろそろ反落の可能性があり要警戒ということになるでしょう。まして、非常に重要な200日線が下向きの状態を続けるなかで、市場価格が一時的にもそれを上抜けた場合、そこは「売り時」となるケースも少なくはありません。よって、まだ多少の上値余地はあるものと思われますが、ここから深追いしてユーロ/ドルの買いで取りに行くことには相当の慎重さが求められることとなるでしょう。
ちなみに、上の図において「逆行現象(ダイヴァージェンス)」とあるのは、相場が下降しているのにも拘らず、逆にRSIが上向きの傾向を示しているケースで、こうした場合は足下の下落に一旦歯止めのかかることが多いとされています。もちろん、相場が上昇しているときにRSIのダイヴァージェンスが見られたら、それは足下の勢いが一旦弱まる可能性を示すものとなります。今後のご参考になさってください。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役