2012年7月3日、豪州準備銀行(RBA)は政策金利であるオフィシャルキャッシュレートを3.50%に据え置くと発表しました。周知の通り、RBAは5月と6月に連続で政策金利を引き下げており、2011年11月以降の利下げ幅は合計で125bp(ベーシスポイント)となっています。よって、当面はこうした利下げの効果と足元の物価情勢の双方を見定めたうえで、今後の政策方針を定めて行きたい意向であるものと見られます。
去る6月6日に発表された豪州の1-3月期GDP伸び率は、季節調整済みで前期比プラス1.3%、前年比プラス4.3%と、市場の予想を大幅に上回りました。また、昨日発表された5月の住宅建設許可件数は前月比+27.3%(予想は+5.0%)、本日発表された5月の小売売上高は前月比+0.5%(予想は+0.2%)と、このところの豪州経済は少々意外感を感じるほど堅調に推移していることがわかってきました。こうしたことは市場で豪ドル買いの圧力が強まる一因となっており、豪ドル/ドル、豪ドル/円ともに6月初旬以降の値動きには相当の力強さが感じられます。
下図は年初からの豪ドル/円の値動きを示すもので、6月1日に年初来の安値を付けてからは急激に値を戻す展開となっていることがわかります。その過程では、まず6月半ばに一目均衡表(日足)の「転換線」が「基準線」を上抜け、後に「基準線」が上向きになっていることがわかります。これは、相場の「好転」を示す一つのシグナルです。
さらに、6月19日以降は「遅行線」が日々線を上抜け、6月29日以降は200日移動平均線(200日線)をも明確に上抜けてきました。まして、目下の200日線は緩やかながらも上向きになってきています。もちろん、これらも強気のシグナルです。
水準的には、3月高値から6月安値までの下げに対する50%戻しを達成し、勢いづけば次の上値メドは61.8%戻し=83.21円ということになるわけですが...。その前にクリアしたい一つの重要な壁があります。それは、もはや言うまでもなく一目均衡表(日足)の「雲」上限です。
この「雲」というのは文字通り「抵抗帯」であり、下げ基調の時には下支え、上げ相場の時には上値抵抗となるケースが少なくありません。それは「雲」が形成されている価格帯のなかに投資家の様々な「思い」が詰まっているからであり、そこにはいわゆる相場の「しこり」があります。逆に言えば、この「しこり」が解消され、市場価格が「雲」を突き抜けたとき、そこには新たな局面が待ち受けているのです。
今まさに戻りを試す展開となっている豪ドル/円が、この「雲」上限を明確に上抜けると、いわゆる「三役好転」という状態になります。この三役好転とは、
【1】転換線が基準線を上抜け、基準線が横這いもしくは上昇している、【2】遅行線が日々線を上抜けた、
【3】現在の相場が「雲」を上抜けた、
という状態を指し、これは買いのポイント=相当に強気のシグナルとされています。
果たして、近日中に豪ドル/円の「三役好転」は見られるのか...。大いに注目しておきたいところです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役