前回の本欄で取り上げたEUサミットの日程が迫ってきました。昨日(6月26日)、独メルケル首相が、議員たちとの非公式な会合で「自分が生きている限り欧州で国家債務を共有することはない」と語ったとされ、すでに市場ではEUサミットに対する期待感が後退している模様です。とはいえ、いまだ「一縷の望みもない」とは言い切れず、市場は静かに「そのとき」が訪れるのを待っているといった状況です。

このEUサミットの結果に対する市場の反応がリスク・オフに傾くのか、それともリスク・オンに傾くのかはいまだ不明ですが、前者ならドル買い&円買い、後者ならドル売り&円売りとなり、結局のところドル/円の行方はドルと円との力関係が問われるということになるでしょう。その点、目下のところ材料的にはドル高・円安に傾く可能性の方が高いのではないかと筆者は見ています。   なぜなら、まず昨日(26日)の衆院本会議で増税法案が可決され、市場の一部では増税デフレへの対応策として日銀が金融緩和強化の方向へ舵を切るのではないかと囁かれていることが一つ材料視されます。そして何より、現実に日銀の当座預金残高が過去最高を更新する見通しとなっており、今後も残高の増額が定着すれば市場は円売り姿勢に傾きやすくなると見られていることも見逃せません。

では、テクニカル的な観点から現在のドル/円を見るとどうでしょう。ドル/円の一目均衡表(日足)については本欄の2012年6月13日更新分でも触れており、直近の安値を付けた6月1日に「雲のねじれ」が生じており、そのことが相場反転のきっかけとなった可能性があるという点を指摘しました。

そして、下図に見るように6月18日には、ついに「転換線」が「基準線」を上抜けることとなり、勢い6月25日には80.62円の高値を付けるに至っています。実のところ、ドル/円の80.50―60円あたりには週足ベースの一目均衡表に見られる「雲の上限」が位置しており、目下のところは同水準が上値を押さえる格好となっています。また、いまだ横向きで推移している「基準線」が明確に上向きになってこないことには、相場が「好転した」とは言えないでしょう。

さらに、一時は日々線を上抜けるかに見られた「遅行線」も、結局は日々線と絡み合うような格好になっており、いまだすっきりとしない展開であることは否定できません。とはいえ、当面の下値は「基準線」あるいは200日移動平均線(200日線)によって下支えされると見られ、いましばらくは一定の底堅さが維持されるものと思われます。

今後の注目ポイントとしては、週足の「雲」上限を上抜けることができるか、日足の基準線が上向いてくるか、日足の遅行線が日々線を上抜けてくるか、そして最終的には日足の「雲」上限を上抜けてくるか、といったところが挙げられるでしょう。

そうした相場「好転」のシグナルが一つひとつ灯った場合、当面の上値メドとなるのは3月15日高値から6月1日安値までの下げに対する50.0%戻しの80.92円、そして61.8%戻しの81.69円あたりになるものと考えることができるでしょう。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役