2012年6月1日、ドル/円は一時的にも78.00円を割り込んだ水準で直近の安値を付けましたが、そこからは現在の79円台後半まで一気に切り返す動きを見せています。

そうした値動きのきっかけとなったのが、5月の米雇用統計や6月のECB理事会、スペイン政府による銀行支援要請などであったことは事実なのですが、それともう一つ見逃せないポイントがあります。それは、下の図中でもわかる通り、6月1日時点でドル/円の一目均衡表(日足)において、いわゆる「雲のねじれ」が生じたことです。

この「ねじれ」というのは、一目均衡表の「先行スパン1」と「先行スパン2」の位置関係が逆転することによって生じるもの。この「先行スパン1、2」についての詳細説明は他の機会に譲らせていただきますが、これらのラインは「当日を含む26日先に記入する」こととされているため、以前から「ねじれ」が生じることはわかっていました(残念ながら、この件について本欄では事前に触れることができませんでした)。

俗に、この「ねじれ」は「変化日」などとも言われ、相場の基調転換が起こりやすいところとされています。振り返れば、6月1日以前に「ねじれ」が生じたのは3月20日あたりのことであり、その頃からドル/円の下落基調が本格的に強まり始めたことは動かぬ事実となっています。もちろん、この「ねじれ」が生じたからといって、必ずしも基調転換が起きるとは限りません。ただ、今後注目しておきたい一つのポイントと言えることは確かでしょう。

このように、先人の偉大な発明である一目均衡表は、私たち投資家に対して実に様々な気付きを与えてくれます。そこで、以下ではこの一目均衡表の「基準線」、「転換線」、「遅行線」について、そのポイントを記しておきたいと思います。

まず「基準線」ですが、これは当日を含む過去26日間の「中値(高値と安値を足して2で割ったもの)」であり、この基準線こそが「相場の基準」であるとされています。よって、この基準線が示す方向が相場の方向性を示しており、現在の市場価格が基準線よりも上に位置していれば「強い相場」と判断し、逆に現在の市場価格が基準線よりも下に位置していれば「弱い相場」と判断します。また、基準線の上昇を伴わない相場の上昇は短命に終わる可能性が高いと考えます。

一方で「転換線」は当日を含み過去9日間の「中値」であり、この転換線が基準線を下から上へ抜けると「好転(=強い)」、その逆であれば「逆転(=弱い)」と考えます。ただし、転換線が基準線を上回っても、肝心の基準線自体が上向きに転じてこなければ「好転」とは言いません(その逆もしかりです)。

さて、ここであらためて上の図を見てみると、現在の市場価格は基準線より上に位置していますが、転換線は基準線より下方にあります。ここにきて基準線、転換線ともに一頃の下向きから横向きに変わってきていることが「弱気の後退」を示していることは確かですが、本当に「強気」と判断するには転換線が基準線を上抜け、さらに基準線が上向きになる必要があることはご理解いただけるものと思います。

なお、もう一つの「遅行線」については、過去に本欄でも幾度か触れています。これは現在の市場価格を26日前(当日を含む)の位置に単純に記入したもので、この遅行線が26日前の市場価格を上抜けたら「好転」、下抜けたら「逆転」と判断します。上の図にあるように、現在の遅行線は26日前の市場価格を上抜けるかどうかの瀬戸際にあります。よって、今後の市場価格(26日前)との関係には要注目です。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役