ここにきて、ドル/円相場の顔つきに若干の変化(その兆し)が見て取れるようになっていることは、すでにお気づきのところではないかと思います。

まず何より注目されるのは、2007年6月高値と2010年5月高値を結ぶ長期レジスタンスラインを、ついに先週(2月6日~2月10日)の週足終値ベースで上抜けたことです。もちろん、これが単に1週だけのことであれば誤差の範囲内と無視することもできるでしょうが、2週連続ということになれば、さすがに無視できなくなってきます。その意味で今週末(2月17日)の終値は大いに注目されるところと言えるでしょう。

振り返ってみれば、ドル/円が2007年6月に124円台の高値をつけて反落し、長らくの下落基調に転じてからは、下のチャートにも示した通り、円が対ドルで大きく「5波構成」の強気相場を演じてきたと考えることができるものと思われます。そうであるとするならば、2010年5月にドル/円が94.99円の高値をつけて以降、円は対ドルで「第5波」の上昇局面にあり、この第5波が終了した時点で5波構成の強気相場は完了するといった考え方があります。

これは「エリオット波動理論」というものに基づいた考え方で、この波動理論を考案したエリオットという賢人は「人間の感情の起伏には一定のリズムがあり、人間の感情を映すマーケットの動きには予測可能な波動パターンがある」と考えました。そのパターンとは「強気相場は3つの大きな上昇波からなり、この相場は上昇波よりも小さな下降波を併せ持つ、合計5波動で構成される」というもので、この5波構成の強気相場が完了すると今度は3波構成による弱気相場が生じるとしています。

つまり、この波動理論に基づいて考えれば、いずれ近いうちに対ドルでの円高基調は終了する(あるいは、もうすでに終了している)と考えることもできそうです。

(図をクリックいただくとファイルをダウンロードしていただけます。)

さらに、このチャートを細かく分析して行くと、第1波の価格変動率(ドル/円の下げ幅)と第3波のそれがともに-23%で同じであることがわかり、さらに第5波の価格変動率もそれに程近いということがわかります。よって、2011年10月につけたドル/円の安値が第5波の終点と考えることもできなくはないものと思われます。

また、ここで第5波も-23%であるとするならば、計算上は73円台もあり得るということになり、今後、欧州債務危機が一段と混乱するようなことがあれば、昨年10月につけた歴史的なドル/円の安値を一時的にも下回る可能性がないとは言えません。

ただ、前述したように週足終値ベースで長期レジスタンスラインを2週連続して上抜けるようなこととなれば、そのインパクトは決して小さくないでしょう。足下では、先にドル/円が一目均衡表の日足「雲」上限を上抜け、2月14日には重要な200日移動平均線をも一気に上抜けてきています。そして今後、昨年10月高値=79.50円、さらに昨年8月高値=80.24円などを上抜けた場合には、そのたびに「どうやらドル/円の基調は円安・ドル高に転換したようだ」との感触が強まるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役