外国為替取引で一定の成果を上げて行くためには、まず市場に吹く風の向き=大きな流れを常に掴んでおくことが重要です。もちろん、それは百戦錬磨のプロたちにとっても基本中の基本であり、そのためにプロたちは常日頃から米ドル指数(ドルインデックス)の推移に注目しています。

このドルインデックスはドルの総合的な価値(強弱感)を示す指標とされ、ユーロ、日本円、英ポンド、カナダドル、スウェーデンクローネ、スイスフランという主要6通貨の対ドルレートを、個々の重要度に応じて加重平均した数値です。なかでもユーロ/ドルが一番重要度が高く、全体の過半のウエイトを占めます。

ときに昨今は、市場に漂うその時々のムードを表す際に「リスク・オン」、「リスク・オフ」という言葉が良く用いられます。基本的に、リスク・オンならドル売りで、リスク・オフならドル買いという捉え方になり、これはリスク選好のドル売り、リスク回避のドル買いという言い方と同意と考えていいでしょう。

では、いまはリスク・オンなのか、それともリスク・オフなのか...それはドル/円だけを見ていてもわかりません。例えば、リスク・オフのムードが強まった際にはドルも買われますが、同時に円も買われることが多いからです。その点、ユーロ/ドルの動きはある程度参考になりますが、それも十分な判断材料とは言い切れません。そこで大いに参考としたいのがドルインデックスなのです。

図:株式会社アルフィナンツ作成 ※グラフをクリックいただくと拡大版をPDFファイルでご覧いただけます。

では、以下に米国が2010年11月にQE2の実施を決定して以降の市場のムードを大まかに記しておくこととしましょう。
【A】QE2の実施が決定して当座のドル売り材料が出尽くしとなった一方で、アイルランド問題を中心に欧州のソブリンリスクが再燃し、市場はリスク・オフのムードへ。

【B】アイルランドやポルトガルを支援する方針が固まり、一方では米国がブッシュ減税の延長を決定。QE2の効果によって米株価も上昇し、リスク・オンのムードが続く。

【C】2011年6月いっぱいでQE2は終了。日本の震災の影響が米国の波及したうえ、米国債務問題でデフォルト懸念まで台頭し、徐々に景気回復ムードが後退する。

【D】9月に入って俄かにギリシャのデフォルト懸念が再浮上。関係各国の支援体制は足並み揃わず、欧州不安は一段と深刻化。綱渡りの対応にリスク・オフのムード強まる。

【E】10月下旬に開催されるEU首脳会談までには危機回避の具体策がまとまるとの期待が盛り上がる。期待先行ながらも市場には徐々にリスク・オンのムードが拡がる。

そして、現在はとりあえずギリシャやイタリアの騒動が一旦収束したものの、依然として危機感が強く、さらに欧州の景気下振れが新興国の景気にも飛び火すると見られていることで、リスク・オフのムードが再び強まりつつあります。

コラム執筆:

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役