ギリシャに続いて、今度はイタリアの首相が辞任を表明。首相が変わったところで、そこから一気に状況が改善するわけでもないのでしょうが、両国とも首相辞任を切り札にして財政緊縮策を議会に受け入れさせるという戦法(?)をとったため、とりあえず市場ではユーロ・ベア(弱気)材料が一つ消えたことを評価しているようです。

とはいえ、今後本当に財政再建が進むかどうかは未知数ですし、10月下旬にEU首脳が取り決めた欧州域内の銀行資本増強策が、銀行の貸し渋りや貸し剥がしの横行につながり、域内景気を下振れさせる懸念も消えません。

そんな混沌とした状況の下、ユーロ/ドルのチャートは下に見るように、文字通り「雲」のなかにあります。これは、以前も本欄で用いた週足ベースのローソク足チャートに一目均衡表を描画したもの。一般には、週足の一目均衡表を頻繁にチェックすることもあまりないと思うので、本欄ではあえて取り上げておきたいと思います。

図:株式会社アルフィナンツ作成 ※グラフをクリックいただくと拡大版をPDFファイルでご覧いただけます。

見れば、ここ数週間の値動きは、絵に描いたように週足「雲」の下限を下値支持、上限を上値抵抗としていることがわかるでしょう。そして、今後もしばらくはこの「雲」のなかでの推移を続ける可能性があるものと見られます。なお、仮にこの「雲」下限を下抜けた場合には、そこから一気に下げ足を速める可能性があるということも、一応念頭には置いておきたいものです。

加えて、このチャートからは2010年6月安値以降のリバウンドと2011年5月高値以降の調整、同年10月安値からの再リバウンドといった値動きのなかから、ユーロ/ドルがいわゆる三尊天井(ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ)を形成している可能性を読み取ることもできるのではないかと考えます。

この三尊天井は、テクニカル分析の世界において数ある「転換持ち合い」の一つのパターンとされており、そのフォーメーションの完成をもって、相場の基調が転換したことを示すサインと捉えるものです。実際の値動きでは、まず向かって「左肩」、「頭」が形成されていて、2011年10月安値以降は「右肩」を形成している状況なのではないか...。

であるとするならば、2011年1月安値と同年10月安値を結ぶ「ネックライン」を下抜けた時点でフォーメーションは完成となり、そこで2010年6月安値からのリバウンド局面が終了したとの感触がより強く感じられることとなります。

つまり、今後はまず一目均衡表の週足「雲」下限を下抜けるかどうかに注目し、仮に下抜けた場合は、次に前述したネックラインを下抜けるかどうか(三尊天井が完成するかどうか)に注目しておきたいということです。

なお、最終的にこのネックラインを下抜けた場合には、比較的まとまった値幅で中期的に下落する可能性が高いものと考えられます。

コラム執筆:

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役