これまで本欄で紹介してきたトレンドラインや移動平均線、フィボナッチ比率などを使って基調転換の兆候を察知したり、相場の行方を予想する手法を「テクニカル分析」と呼ぶのはご承知の通り。なかでも、前々回(2011年10月5日更新分)ご紹介した一目均衡表は、すぐれて体系化された非常に有効性の高い分析ツールとして知られています。   では果たして、その有効性とはどれほどのものなのでしょう? ここで、あらためて検証してみることにしましょう。

下の図は、前々回と同じユーロ/ドルの週足チャート(過去6カ月)に、一目均衡表を描画したものです。まず、何より一目瞭然なのは、【A】の地点において週足ロウソクが終値ベースで「雲」の下限を下抜けず、最終的には陽線で引けたということです。これはつまり、一目均衡表の「雲」下限が当座の下値支持役として機能したことを示します。

図:株式会社アルフィナンツ作成 ※グラフをクリックいただくと拡大版をPDFファイルでご覧いただけます。

次にその翌週ですが、これは少々長めの陽線となっており、週を通じて強めの戻り歩調を辿ったことがわかります。この週においては、一目均衡表の「遅行線」が反転・上昇して、「雲」上限を上抜けている様も見てとれます。これは、当座の強気サインです。

しかし、この週の高値ならびに終値は、結局のところ「雲」上限を上抜けずに、上値を押さえられた格好となりました。つまり、一目均衡表の「雲」上限が当座の上値抵抗として機能したことがわかります。

ちなみに、この「雲」上限付近というのは、5月高値から直近安値までの下げ幅に対する38.2%戻し(2011年8月24日更新分参照)の水準にも近く、このあたりには複数の「節目(この場合は戻りメド)」が集中していることもわかります。

その意味では、同じような位置にまで降りてきている一目均衡表の「転換線」も同様に一つの節目となり得ます。この転換線は、それ自体が相場の節目(戻りや押しのメド)になり得るということも一つですが、いま一つに「基準線」との関係から相場の行方を予想することもできるという点が注目されます。

たとえば、【B】の地点では転換線が基準線を下から上に突き抜けています。これは「買い(強気)」のサインと見ることができ、実際、その後の相場は一定の上昇基調を辿りました。これは逆に、転換線が基準線を上から下に突き抜けたら「売り(弱気)」サインと見ることもできるということです。直近では、【C】の地点において売りのサインが点灯していたということになります。

さて、肝心の今後ですが、当面は「雲」の上限・下限の間を行き来するとの見方を基本とし、いずれ「上限を上抜ける」か「下限を下抜ける」かを見定めてうえで、そのサインが示す方向の流れに乗るというのが一つの戦略になるものと考えられます。

コラム執筆:

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役