多くの投資家が愛好している「一目均衡表」は、実に素晴らしく体系化された投資判断のためのスーパーツール。考案者の一目山人(ペンネーム/以下、山人)は「いつ、いくらになれば買い、いくらになれば売り、と決定的に教えてくれる」、「均衡表に基づく予測は常にできることであり、大いに予測すべき」とまで述べています。

その詳細な解説には相当の紙幅を要するため、これまで本欄では取り上げてきませんでしたが、文字通り「一目(ひとめ)」でわかりやすいところから順に、本欄でも少しずつ取り上げて行こうと考えています。

そこで今回は、下落基調が続くユーロ/ドルの行方を一目均衡表によって予測してみたいと思います。早速、下の図をご覧ください。これはユーロ/ドルの週足(ローソク足)チャートに一目均衡表を描画したものです。複数ある其々の線の説明は後の機会に譲ることとして、今回は最も目立った存在である「抵抗帯(=俗に『雲』と呼ばれる)」と市場価格との関係に注目したいと思います。

まず、現在の市場価格が「雲」よりも上に位置している場合は強い相場、逆に下に位置している場合は弱い相場と判断することが基本となります。また、この「雲」は、ときに下値支持になり、ときに上値抵抗になるものと考えます。

図:株式会社アルフィナンツ作成 ※グラフをクリックいただくと拡大版をPDFファイルでご覧いただけます。

たとえば、図中【A】の地点では「雲」の下限付近が下落基調にあった市場価格の下値支持役として機能しており、しばしもみ合った相場は後に再び上昇基調に転じていることがわかります。一方、図中【B】の地点では「雲」の下限付近で数週間に渡ってもみ合う展開を続けたものの、結局は「雲」の下限を明確に下抜け、その後は一気に下げ足を速めていることがわかります。

さて、それでは現在(今週)の週足ローソクは一体、どのような水準に位置していると言えるでしょうか。それは一目瞭然で、現在のユーロ/ドルは週足「雲」の下限付近に到達しており、ここで下値支持を得て下げ止まるか、はたまた「雲」下限を下抜けて下げ基調を速めるかの瀬戸際にあるということになります。

ここでもう一つ注視しておきたいのは、山人自らが「最も大事」と述べている「遅行線」の動きです。この遅行線は図中【C】の地点で市場価格を下抜けており、それ自体が強い売りのサインと考えることが基本です。加えて、かねてより筆者は遅行線と「雲」の関係にも大いに注目しており、この遅行線が「雲」の下限を下抜けた場合、後の相場は大きく崩れるものと考えています。

つまり、仮に今後のユーロ/ドルが終値ベースで「雲」の下限を明確に下抜け、同時に遅行線が「雲」の下限を下抜けた場合には、その後、ユーロ/ドルの下落基調が一段と強まるものと考えておく必要があるということです。

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役