前回の本欄で、豪ドルという通貨は世界全体の景気動向に非常に敏感な通貨であり、目下のように米景気後退懸念や欧州債務問題、中国の景気減速懸念など、先行きに不安な要素が積み重なると売り圧力に押されやすくなると述べました。そして案の定、2011年7月下旬から8月初旬にかけて86.00円近辺に位置していた豪/ドル円は、ここにきて一時的にも74.00円を割り込む(9月26日時点)までの下落となっています。
とはいえ、さすがに下げるにも一定の限度というものがあるでしょう。それは、多くの買い方がロスカットを強いられることで、徐々に売り圧力が衰えて行くことが一つ。それと同時に、売り方が利益確定目的で買い戻す動きに出ることも一つです。
では一体、相場が下げ止まる(あるいは上げ渋る)レベルというのは、どのあたりと見ればいいのでしょうか? その一つの目安となるのが「移動平均かい離率」です。
下のチャートは、上段が豪ドル/円の過去の価格推移に89日移動平均線(89日線)を重ね合わせたもので、下段がその時々の価格と89日線とのかい離(上下にどの程度離れているか)をパーセンテージで表したもの=89日移動平均かい離率です。
これを見ると、まず相場が上げ基調にあったとき、89日線とのかい離率がプラス5%の水準を超えてくると、徐々に上げ渋りやすくなることがわかります。また、ゼロ%の水準を下から上に突き抜けてきたとき、上げ基調が強まりやすくなることもわかります。
逆に、相場が下げ基調にあったとき、89日線とのかい離率がマイナス5%の水準を下回ってくると、徐々に下げ止まりやすくなることもわかります。また、ゼロ%の水準を上から下に突き抜けてきたとき、下げ基調が強まりやすくなることもわかります。
つまり、少々大雑把に言えば、プラス5%かい離は「売り」のサイン、マイナス5%かい離は「買い」のサインと見ることができるということ。換言すれば、プラス・マイナス5%に接近することは一種の「逆張り指標」とみることもできるわけです。
ただ、さらによく見るとわかるのは、マイナス5%の水準を下回ってもなお下げ止まらない場合、そこから一段と下げが加速するケースも散見されるということ。これは、プラス・マイナス5%超になると、ときにそれが一種の「順張り指標」に転換する場合があることを示しています。とはいえ、そうした場合でもマイナス10%の水準を下回ってくると、さすがに一旦は下げ止まっているということもわかるでしょう。
前述した9月26日の時点では、89日線とのかい離率がマイナス10%の水準を一時的にも下回りました。これは昨年5月下旬以来のことでもあり、そうしたことから「豪ドル/円はそろそろ反発してもおかしくはない」と判断されることになります。
田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役