本欄ではこれまで、二つ以上の安値(あるいは高値)を結んだサポートライン(あるいはレジスタンスライン)、または計算期間が異なる複数の移動平均線に見られる相互の位置関係などを使って、相場の行方を予想する手法について幾度も触れてきました。

果たして、それら各種の手法(=テクニカル分析と呼ばれる)にはどの程度の有効性が認められるのか...この9月に入って大きく値を崩すこととなったユーロ/ドルの価格推移をもとに、ここであらためて検証してみたいと思います。

まず、下のチャートで一目瞭然なのは、2011年9月8日の大きな下げによって、昨年6月安値と今年1月安値を結ぶ重要な長期サポートラインを一気に下抜けたということです。これは昨年6月に安値をつけて以降、長らく続いてきたリバウンド局面がついに終了したことを意味するものと考えられ、その後の下げが加速するであろうことを予感させるに十分なサインと言えます。

加えて、同じ9月8日の下げに伴って、下向きの89日移動平均線(89日線)を21日移動平均線(日線)が上から下へ突き抜けたということもわかります。これは、以前本欄でご紹介した「信頼性の高いデッド・クロス(DC)」であり、基本的には「売り」のサインと考えられます。

さらに、このときユーロ/ドルは前述した2本の移動平均線の下方にある200日移動平均線(200日線)をも下抜けています。いまだ、この200日線は上向きですが、いずれ下向きに転じてくるものと想定され、そうなった場合には一段と下げの圧力が強まるものと考えることができます。

このように幾つかの「売り」のサインが現れた後、大きく下押したユーロ/ドルは9月12日に1.3500ドル近辺で安値をつけて一旦下げ止まりました。それは、チャート上に描画した今年5月高値からのレジスタンスラインとそれに平行するアウトライン(サポートライン)によって形成された「下降チャネル」の下限(=一つの重要な節目)に到達したことと、「1.3500ドルちょうど(=キリのいい数値)」という心理的節目に到達したことによるものと考えられます。

場合により、今後ユーロ/ドルは前述した「長期サポートライン」(=転じて現在はレジスタンスライン)の付近まで戻ってくる可能性があります。これは「リターン・ムーブ」と呼ばれるもので、相場の基調転換後によく見られる現象です。

仮に、このリターン・ムーブが一時的に見られたとしても、いずれ相場は再び下方へと向かい、前述した1.3500ドルの心理的節目をも下抜けてくるものと思われます。

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役