7月12日から13日にかけて急速に円高が進む場面がありました。8日からの4営業日で見ると、ドル/円で最大3円、ユーロ/円では最大7.2円にもなる円高方向への動きです。このようなときに高めのレバレッジをかけてドル/円やユーロ/円の買いポジションを持っていたら、一時的にも大きな評価損が発生するのはもちろんのこと、ヘタをすると証拠金維持率が設定されたレベルにまで低下して、ロスカット(強制決済)・ルールが発動することとなってしまいかねません。
ここで、あらためて考えたいのは「果たして、FX取引における適正なレバレッジとは、一体どの程度の倍率なのか?」ということです。その答えはズバリ!「個々人が想定する取引期間(=個々人の取引スタイル)と主に向き合う通貨ペアの種類による」です。
例えば、過去の豪ドル/円の価格推移を見ると、10日で8~10円ほど値動きすることは決して珍しくないことがわかります。ここで、大よそ3日~10日程度で決済することを基本とする投資家=スウィング・トレーダーが、証拠金40万円で5万豪ドル(1豪ドル=80円とする)の取引をすると仮定すれば、レバレッジは10倍です。この前提で5万豪ドルを買い、後に8円の値下がりを見れば損失は40万円(取引コストは考慮していない。これでは、たちまち証拠金がパーになってしまう...いや、それよりずっと以前の段階でロスカット・ルールに引っかかってしまうこととなりますね。
つまり、スウィング・トレーダーが豪ドル/円の取引を行う場合には、レバレッジ10倍の設定でも相当に無理があるということ。せいぜい4~6倍ぐらいがイイトコロということになるでしょう。まして、中長期的な取引を基本とする投資家なら、たとえレバレッジ2~3倍でも相当のリスクがあるということを自認しておく必要があるのだろうと思います。
もちろん、より短い期間内での取引を基本とするデイ・トレーダーや数分単位で決済するスキャルパーにあっては、ある程度高いレバレッジも許容されるものと思われます。ただ、ご承知の通り2011年8月からFXの取引倍率(レバレッジ)は25倍以下に規制されることとなっています。「え~、25倍以下ではロクに利益が出せないよ~」と嘆く方もおられるかもしれませんが、今後はより十分な証拠金を積むか、少し長い目で構える投資スタイルに変えて行くことも必要となるでしょう。
田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役