● 政治イベント消化で再び米国に注目が集まる中、改めて米金融機関への「強気」を確認。17/1-3月の純利益は前年比+29%で、当面景気拡大や金利上昇の恩恵を最も大きく受けるセクターの一つ。

● 但し、一部の貸出には成長鈍化の兆し。足元で個人ローンの延滞が増加傾向で、個人ローンの比率が高い地銀にややマイナス。

● 一方、大手金融機関は、トレーディングや投資銀行業務が好調で、今後も利上げによる利鞘も一層拡大する。一定の減税効果や規制緩和も期待できるだろう。

第一回仏大統領選がほぼ想定通りの結果となった今週、米国議会の春休みも明け、月曜日から再開された。当面は、トランプ政権の財政運営、規制緩和、政策金利の引き上げなど、改めて米国のトピックに注目が集まるだろう。

このような環境下で、我々は、改めて、米銀への強気のスタンスを強調する。先週まで株価は、仏大統領選への警戒感や金利の低下、トランプ政権への期待感の剥落で下落してきたが(図表1)、先週出揃った米金融機関の2017/1-3月期決算では、大手も地銀も概ね増収増益の好決算となった(図表2)。今後は以下の通り、特に大手で更なる収益の拡大が期待できるだろう。

17/1-3月期米金融機関の増益の要因と今後の見通し

17/1-3月期の米金融機関の主な増益要因は、(1)市場のボラティリティ上昇による、株や債券のトレーディング益の増加、(2)利鞘拡大による資金利益の増加、(3)企業の財務力改善に伴う与信費用の減少である。

このうち、今後更なる拡大が見込めるのは、「利鞘拡大による資金利益の上昇」である。トレーディング収益は"水物"で先々の利益が読みにくいのに対し、利鞘の拡大の確度は高い。今年3月のFRBの追加利上げの影響はまだ収益には反映されていない上、今後追加利上げがあればその分利益を押し上げる。これまでの利鞘と資金利益の相関関係から、0.5%の利鞘拡大(=5年前の利鞘の水準に戻る)は、米大手行の当期利益を1割前後押し上げるとみられる (図表3)。

これに加えて、経済活動が引き続き活発であることから、大手金融機関では収益の4割を占める手数料も、一層の拡大が見込めるだろう。

リスク要因:個人ローンの過熱感、延滞増加

但し、貸出残高の伸びには今後ブレーキがかかる可能性が高い。昨年まで、商工業貸出も個人貸出も急速に増加しており(図表4)、利鞘と貸出残高のダブルで資金利益を押し上げてきた。しかし、足元で、貸出の延滞率が久々に上昇しつつあり(図表5)、銀行の貸出姿勢も、特に個人ローンで急速に厳しくなっている(図表6)。今後の金利上昇とともに借り入れ需要は減少する可能性が高い。

米大手金融機関に強気

さらに、大手金融機関は金融危機以降資本を積み上げており、これが今後の成長や株主還元の拡充を促すだろう (図表7)。現在、大手金融機関の株主還元は、毎年6月末に発表されるストレス・テストの結果次第でFRBから大きく制約を受ける。しかし、既に1月から地銀についてはこの要件の緩和が発表されている。大手行についても、健全性は向上していることから、ストレス・テスト要件が緩和の方向に向かう可能性もあるだろう。

以上の点から、個人ローン金利以外の収益の割合が大きく(図表8)、手数料等から景気の拡大恩恵を受けやすい大手6行(特に、相対的に割安か、EPSの増加率が大きいゴールドマン・サックス、シティグループ、バンクオブアメリカ、)に注目したい(図表9,10)。