今日は5回シリーズの第二回。我が国が現代経済を支えるための金融システムの改革を進めなかった結果(だと私は思っているのですが)、どのようなことになっているかについて書きたいと思います。
資金の出し手(=リスクの取り手)は、ずぅっと掘っていくと個人か財団しかあり得ません。例えば株式で云うと、或る会社の株主は法人か個人か財団であり、その法人が株式会社であればそこには株主がいてそれは法人か個人か財団であり、・・・と最終実質株主を突き詰めていくと、それは全て個人か財団になります。ファンドなどの受益者も同様で、最終的な受益者は個人か財団しかありません。だとすると、マクロ的に考えると、個人金融資産の分布と国全体のバランスシート(債務サイド)は、ミラー、即ち双子の関係になる筈です。
国は公的資金を大量に使って経済政策から社会保障までを実施しているので、同時に国民から大量にお金を借りねばなりません。個人向け国債を買う行為は、国にお金を貸すことです。ゆうちょ銀行に貯金をする行為は、国にお金を貸す行為です。銀行に預金をしても、銀行は国債を大量に購入してますから(その額は更に増えています)、これも間接的に国にお金を貸す行為に繋がります。国はこうして大量のお金を個人から借り、個人から見るとそれは「資産」になります。個人金融資産が1200兆円から1400兆円超に増えたのと同時期に、年金支払い債務を含んだ場合の国の債務超過額は同程度の額増えているのです。
これはタコ足配当のようなものです。「国」のオーナーは国民ですから、自分が株主の会社が債務超過に陥っているが、その会社に社債を発行させてそれを自分が持ち、自分の金融資産は増えたと思っているのと同じことです。或いはこれはタコ足配当ではなく、未来の国民に借金を付け替えて、自分の資産が増えているとする行為です。
これは明らかにどこか変です。或いは未来の国民に対してアンフェアー、無責任です。早晩この状況は直さなければいけません。直さないで放っておくと、いつか日本は見放され、日本円は強烈に安くなり、ハイパーインフレが起きます。そしてその結果、国の債務額は変わりませんが、持っている資産の額がインフレで増えるので、国のバランスシートはバランスを取り戻します。しかしその時は、強烈な円安になり日本はとても小さな国になっており、国民の個人金融資産の大部分である預貯金、それは即ち実質的中身は国債な訳ですが、は大幅にその実質的価値が目減りしています。
そうならないようにすることが、今後の日本に、それは即ち私たちに、課せられた課題だと思います。