7/28-29の金融政策決定会合では、ETFの購入枠拡大と、米ドルの資金供給枠の拡大と、市場の事前予想よりは小規模な緩和が決定された(図表1)。資産購入枠の拡充(量的緩和)は見送られ、年間80兆円の増加ペースが維持された。
また、債券市場等で期待されていたマイナス金利の深掘りは、我々の想定通り見送られた。図表2の通り、深掘りの場合、銀行全体では5,000億円の減益となる可能性があっただけに(マイナス幅が0.2%ポイント引き下げられ、日銀当座預金金利が0.3%とされた場合)、株価は素直にプラスに反応し、東証株価指数全体を押し上げた。
なお、同時に、米ドルの資金供給枠の倍増が決められた。しかし、総額でも約2.5兆円と、銀行の200兆円にも上る米ドル資産総額に比べ極めて少額であり銀行への恩恵は限定的であろう。
今後の市場への影響
今回の会合においては、「次回の会合(9月20~21日)で、経済物価動向や政策効果について総括的な検証を行う」とし、今後の追加緩和に含みを持たせた。これに伴い、9月に向けて再び金融緩和に期待が集まると思われる。
しかし、どのような政策が取られるにしても、金融政策手段の限界が強く意識されることになるだろう。実際、インフレ率が低下しているにも関わらず緩和が見送られていることで、市場は、回を追うごとに金融政策の手詰まり感を強く意識するようになっている(図表3)。特に今回は、政府が大規模な財政政策を取るにも関わらず、小幅な緩和に留めたことで、一層、政策手段が残り少ないことを市場に意識させた。政策を取る余地が比較的大きかったETF購入枠についても、今回カードを切ってしまった。今後は金融緩和の限界説が確信に変わり、金融政策が期待を押し上げる余地が狭まっていくだろう。
金融政策への期待が剥落しただけに、来週8月2日に発表される政府の経済対策の詳細への注目が一段と高まる。本日時点の報道では、経済対策の規模は、事業規模28.1兆円、財政支出(いわゆる"真水")7.5兆円とされている。近時の経済対策の事業規模としては、リーマンショック後の09年に次ぐものとなる。しかし、市場が重視する"真水"としては、過去20年間の平均(5兆円)を大きく上回るものではない。真水の規模に期待できないなら内容が一層問われる。仮に、中長期的効用の認められないものだと市場に見限られた場合、市場の失望感が増す可能性が高いだろう。