あじさいの綺麗な季節になりました。あじさいほど、梅雨とイメージが合致する花はないでしょう。嫌いではないのですが、どこかパッとしないイメージがあります。日本に古くからある花ですが、古今集には一回も登場しません。調べてみると、万葉集には二首詠まれているのですが、古今集から新古今集までの八代集の中で、あじさいは一首も詠まれていないようです。鎌倉時代に入っていくつか詠まれているようですが、それらも主役はあじさいについた露に映る月の光であったり、あじさいの花の下に群がってもう一つ花が咲いたように見える蛍だったりして、あじさいはあくまでも脇役のようです。
小さい頃に、根本に石灰を撒いてアルカリ性にして花を赤紫色にしたり、逆に酸性にして青くさせたりした記憶がありますが、そんな風に扱われてしまうのも、どこか花に対するリスペクトがないような気がします。あのボテッとした大きさが、可愛らしくないのでしょうか。朝顔も古今集には詠まれていませんから、あの手の青色は、平安貴族には受けなかったのでしょうか。絵巻にも、暖色系の色ばかりで、寒色、即ち青色は見た覚えがありません。平安の頃、空や海の青が今よりもずっと鮮やかで、他の青色は目立たなかったのでしょうか。