先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は揃って急反落となりました。中国本土株は週初より軟調な動きでスタート。年末までに新規株式公開(IPO)が再開されることによる需給悪化懸念や米国の利上げ観測によってドル高が進んでおり、ドルに実質的にはペッグした動きとなっている人民元もドル以外の通貨に対して通貨高が進んでおり、中国の輸出への悪影響が懸念されました。もっとも、11月26日(木)までは概ね横ばいといった推移で、特に創業板指数は25日(水)には大幅高となり、7月下旬以来の高値を付けていました。
ところが27日(金)に状況は一変、各指数とも急反落となりました。キッカケは中国最大手の証券会社である中信証券と3位の国信証券が、証券会社監督管理条例に違反した疑いがあるとして、中国証券監督管理委員会(CSRC)から調査を受けるとの通知を受けたことを開示したことです。また、CSRCは証券会社が投資家への信用取引の資金提供を行う際にデリバティブ(金融派生商品)の利用を禁じることも発表しています。上海市場では200銘柄以上がストップ安となる展開となり、1日の下落率としては3ヶ月ぶりの大きさとなりました。
少し気になる点は、6月半ばに中国本土株が猛烈に下げだした地点から、もうすぐ半年が経過することです。6月初め頃に中国株は高値を取りましたが、その時まで、信用取引残高は異常なレベルにまで膨張していました。直後からの暴落で当局は一時的に追い証を避けるための緊急措置を取って、投げ売りによるさらなる暴落はしのげたものの、そろそろ高値で信用買いをした人の返済期限が迫るところでもあります。またその頃から、当局のやや強引とも言える様々な株価対策が相次いで発表され、5%超を保有する大株主は、いくら株価が下がっても、半年間は株を売却してはならないという措置も取られました。その売却禁止措置もそろそろ期限を迎えるところであり、27日(金)の急落が暴落の呼び水になるのではないかとの懸念も残るところです。
一方、香港市場も中国本土株と同じように26日(木)までは概ね横ばいといった推移でしたが、中国本土株急落の影響を受けて27日(金)に急落。さらに27日に発表された中国工業企業の10月の利益額が前年同月比で4.6%減と9月の0.1%減を大幅に下回ったことも市場心理に影を落としました。先々週から一転して先週は急落という展開となりましたが、今週も引き続き中国本土株の動向が注目されるところです。香港ハンセン指数は50日移動平均線を割りこんでしまいましたが、上海総合指数は50日移動平均線を割り込んでおらず、50日移動平均線での反発も期待出来るところと思います。ポイントは中国当局がどのような対策を出してくるかです。当局としては、過度の信用取引を規制する枠組みは作っておきたい一方で、株価急落は望んでいるわけではないと思いますので、株価急落への対応をどのようにしてくるのかが焦点になると思います。
コラム執筆:戸松信博