「あなたにもできる構造改革」という話を何度かしてきました。即ち、政府が言っている構造改革の一つの大きな部分は政府がお金を何に使うかという問題であり、そうであれば最初から政府にお金を貸さないで自分でお金の行き先を決めれば、自ずと構造改革はできると。
具体的には郵便貯金という形で政府にお金を「貸さ」ないで、その代わりに将来の日本の為に必要と思われる企業の株を買うなどして、個人々々でお金の配分を変えてしまう訳です。
しかし、「当面は株価も不安定であるし、郵便貯金などの方がリスク・リターンを考えると魅力的である。だから取り敢えず『今は』、『自分は』、郵便局にお金を入れておこう。個人による構造改革の波が来たら、勿論自分も喜んで参加しよう」と考えがちで、するといつまでたっても変化は起きないということになってしまいます。
私はこの問題は、電車の中でお年寄りに対して席を譲ることにどこか似ていると思っています。お年寄りが来る。自分よりも若くて、健康そうな人も大勢座っている、何も自分が立たなくてもいいだろう。そして自分は今日は特別疲れているのだ。そう考えると何も起きません。まず自分が率先して立つ。そうしているうちにみんなが、特に若い人が率先して立つようになる。そういう流れが理想的です。お金はきれい事では済まされません。しかし構造変化が起きなければ、そのツケを払わせられるのも紛れもなく自分たちです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。