先週の中国株ですが、上海総合指数、深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は反発となり、特に中国本土株は非常に強い基調となっています。中国本土株は先週に指摘したとおり、週前半は材料出尽くし懸念や、11月1日(日)に発表された10月の中国公式製造業景況感指数(PMI)が49.8となり、市場予想の50.0を下回ったことなどから弱い基調でのスタートとなりました。民間投資会社の著名ファンドマネージャーがインサイダー取引と相場操縦の疑いで逮捕されたことも投資家の警戒心を高めました。

ところが11月4日(水)には急反発となります。キッカケは深セン市場と香港市場の株式相互取引制度「深港通」を年内に導入する方針を人民銀行が発表したことでした。これによって証券株が大幅上昇。また、中国の習近平国家主席と台湾の馬英九相当の会談により、中国と台湾の間での経済関係が強化されるのではないかとの期待感も相場を後押ししました。結果として11月6日(金)まで中国本土株は3日続伸となり、上海総合指数は2カ月半ぶりに3500ポイントを回復しています。

このように中国本土株は「深港通」をキッカケとして上昇したわけですが、その背景には中国経済の底打ち期待感が出てきたこともあるかもしれません。注目できるデータとしては、中国の不動産着工面積があります。今年は8月まで着工面積の伸び率が毎月下がり続けてきたのですが、9月は+3.0%と8月+2.5%から今年初めて切り返しました。この背景には、3月末に中国政府が2軒目の住宅購入での頭金規制を6~7割から4割に引き下げたてこ入れ策がようやく効いてきたことがあると思います。さらに9月末には1軒目の住宅購入での頭金規制を30%から25%に引き下げていますので、10月以降も着工面積は堅調に増加するのではないかとの期待感があります。また、乗用車販売をみても7月を底に9月は4カ月ぶりに前年同月比でプラス成長に戻りました。さらに、中国政府は9月末に、10月初めから2016年年末まで小型車の自動車取得税率を半分にするてこ入れ策を発表しているため、乗用車販売台数は10月以降も、強い基調で推移すると予想されるところです。

香港株も週初は軟調な値動きからスタートし、「深港通」の年内導入方針が発表されると大幅上昇となりました。もっとも、上海と香港の株式相互取引制度の経緯からすると、より多くの恩恵をうける(資金が流れ込む)のは香港市場よりも中国本土市場であるとの思惑が広がり、中国本土株ほど株価は上昇しませんでした。また、香港では引き続き米国の利上げ懸念が台頭しており、相場に影を落としていることもあります。香港ハンセン指数は週間ではプラスとなっていますが、上昇幅は1%と小幅なものでした。

最後に、今週の中国の経済指標ですが、11月11日(水)に10月の小売り売上高、10月の鉱工業生産がそれぞれ発表される予定です。

コラム執筆:戸松信博