先週の中国株ですが、上海総合指数、深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は反落と、揃って弱い基調となりました。週初は10月23日(金)の相場引け後に発表された中国の利下げを受け、堅調な出足となりました。その他、第18期中央委員会第5回全体会議(5中全会)の開幕、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨に人民元が採用されると伝わったことなどの好材料も相場を後押ししました。10月27日(火)も堅調な地合いは続き、特に南シナ海で米軍との緊張が高まったこと受け、防衛関連株が急伸して相場を牽引しました。
ただ、週後半は利食い売りに押され、軟調に推移し、週間ではマイナスに沈みました。気になるのは10月28日(水)には地方政府が運用する年金基金の株式投資を2016年に解禁することが発表されたり(年金基金は純資産の最大30%を株式や株式ファンドに投資できるようになる)、30日(金)には一人っ子政策の廃止が伝えられるなどのプラスのニュースがあったにもかかわらず、株価は弱い基調となっていることです。相場の地合いが良ければ、これらのニュースで株価は上昇してもよいところですが、発表のあった日は逆に反落となっており、相場の地合いが弱いことが示唆されていると思います。
香港株も中国本土株と同じような動きになったものの、特に週末の株価下落は大きなものとなりました。キッカケの1つは中国人寿保険(02628)が発表した第3四半期決算が、73%という予想を超える大幅減益となったことです。同社株は当然急落し、相場を引き下げました。これに加え、5中全会が閉幕し、第13次5カ年計画(2016-20年)の概要が発表されたものの、政策は株価に織り込まれたとの認識が広がったことや、米国の利上げ懸念が悪影響を及ぼしたことも相場に影を落としました。個別では、中国の卸電力価格が引き下げられる計画が発表されたことで電力株も下落し、相場の足を引っ張りました。
以上を考えると、金融緩和や5中全会での政策発表を期待して上昇してきたものの、実際に発表されると材料出尽くしとなり、株価が軟調に転じているというのが現在の中国本土株の状況だと思います。ある意味、次の材料待ちという状態で、目先は利食い売りに押された軟調な展開が続く可能性があります。なお、11月1日(日)に発表された10月の中国公式製造業景況感指数(PMI)は49.8となり、9月の49.8と変わらずの結果で、市場予想の50.0を下回りました。また、10月の中国公式非製造業PMIも53.1と9月の53.4を若干下回りました。これまでであれば、景気刺激策や金融緩和への期待に繋がるところと思いますが、地合いの弱さを考えると、中国経済の失速懸念の拡大に繋がる可能性もあり、注意が必要だと思います。
コラム執筆:戸松信博