先週の中国株ですが、上海総合指数、深セン総合指数、創業板指数は急反落、香港ハンセン指数は続落となりました。先週の中国本土株ですが、週初は国有企業改革や中国政府の政策期待から3日続伸となり、好調なスタートを切りました。ところが8月18日(火)に上海市場の上場銘柄の58%がストップ安となる大幅安となりました。この日は特に大きな材料が出たというわけではありませんが、先週からの上昇が一服し、利益確定売りに押された格好です。翌日は中央銀行が一部の銀行に新たな資金供給を行うと伝わったことが材料になって反発したものの、20日(木)には早くも反落となり、21日(金)は大幅続落となって週を終えています。
週末に中国本土株が大きく下落した理由は2つあります。1つは米国株やアジア株が大きく下落を続けている事です。もう1つは21日(金)に財新メディアが発表した中国の8月の製造業景況感指数の速報値が47.1となり、7月の47.8や市場予想の48.2を下回った上、2009年3月以来の低水準となったことです。中国政府が各種の経済対策をしているにも関わらず、製造業の景況感が悪化の一途を辿っていることから中国経済に対する懸念が高まりました。しかし、これはある意味当たり前のことかもしれません。中国の人民元は実質的には米ドルとペッグしていたため、たとえば、ユーロに対しては2014年6月末から一時22.7%も人民元高になっていました。日本で言えば、1ドル=120円の為替が93円ぐらいまで円高にもっていかれる位のインパクトがあったわけです。もちろんそうなれば日本ですら輸出企業の収益は悪化し、株価も暴落すると思います。これが中国で起こっていることの根本的な原因の1つです。そしてそれを改善するために人民元の切り下げが行われたわけです。
中国当局の株価対策の効かない香港株は更に悪い状況となっています。先週の香港ハンセン指数は6日続落で週を終えており、全く良いところがありませんでした。結局のところ、中国経済が回復しなくてはダメですが、日本もそうであったように、中国経済が回復するには人民元安が必要になってくると思います。前述のユーロとの比較で言えば、たしかに先日の切り下げで一時期の人民元高からは回復しましたが、それでも2014年上半期のレベルには遠く及びません。これはユーロだけでなく日本円に対しても同じような状況です。ということは人民元の切り下げが、今後も継続することが予想されます。それは長期的には中国経済の回復に繋がるという意味で香港株にもプラスですが、短期的にはアジア通貨安競争などの大きな痛みを伴ったものとなりそうで、それを市場は嫌気しているわけです。年間のアノマリーに従えば9~10月ぐらいまでの相場状況は悪く11月ぐらいから回復することになりますが、少なくとも10月までは例年通りの軟調な株価推移が続きそうです。
コラム執筆:戸松信博