先週の中国株ですが、上海総合指数は反発、深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は揃って続落となりました。しかし、いずれも週末にかけて反発しています。中国本土株ですが、週初は中国政府による各種の株価対策によって反発スタートとなりました。特に中国の中央銀行である中国人民銀行が株価対策に動いた点が好感されました。しかし、株価が上昇したところで信用取引の精算売りが出た模様で、翌日には株価は大幅反落となりました。さらに7月8日(水)も大幅続落。株式市場はオープンしているものの企業側から株価下落対策とみられる取引停止申請が相継ぎ、半数近くの銘柄が取引停止となる異常な状態となりました。
7月8日(水)までの値動きを見る限り、中国当局による積極的な株式市場への介入や、各企業の売買停止申請がパニックを増してしまったと思います。そもそも、世界を見渡しても当局による株価対策がうまく機能したことはほとんどありません。中国は日本や米国のバブル崩壊を周到に研究していると聞いていましたが、動揺したのか、理性が作用せず、衝動的に下手な手を出してしまったのだと思います。また、自社株買いや従業員持ち株制度の準備などという、とても重要事項と思えない理由で売買停止が相継いだことで、持ち銘柄が売るに売れない状態になってパニックが拡大し、売れる銘柄を先に売ってしまおうとする動きが出て、下落に拍車がかかりました。しかし、そのパニック売りが底となり、7月9日(木)には反発し、7月10日(金)も大幅続伸となって週を終えています。
先週は香港市場も本土株急落の余波を受けました。これまでは、中国本土株が大きく下がり、それにつられて香港株も少し下がるという具合でした。しかし、中国本土市場でカラ売りを抑制するなどの株価対策が取られ、取引停止銘柄も続出した先週は、本土で売るに売れない人が香港で株を売るといった事態となりました。ただし、香港市場も週末にかけて反発しています。
さて、今後の見通しを考える上で一番重要なポイントは、この株安が実体経済に影響を及ぼすかどうかだと思います。その点の重要な指針となるのが上海銀行間取引金利(SHIBOR)です。2013年にシャドーバンキングが問題になったときは銀行の資金繰りが危機的な状況にあると考えられ、短期金融市場に緊張が走り、SHIBORが急騰しました。こうなると信用収縮が起こり、銀行からの資金供給に問題が起こるので実体経済に影響してきます。ところが今回の株価急落ではSHIBORは落ち着いており、信用収縮が起きていません。つまり、現在の中国の株式市場は個人投資家のギャンブル場とみられており、実態経済への影響は限定的であるとみなされているのだと思います。以上を考えると、しばらくは混乱が継続すると思いますが、いずれ落ち着いてくるのではないかと予想できるところと思います。
コラム執筆:戸松信博