先週の中国株は上海総合指数と深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は揃って大幅続落となりました。中国本土株は週初から政府系のファンドが大型株を買っているとの観測が出たにも関わらず、個人の狼狽売りが続きました。その後、7月1日(水)の遅くに中国当局が信用取引に関する規制緩和を行いました。信用枠を拡大して株を買わせ、暴落を食い止めようというわけです。この規制緩和では公的基金が信用取引向け融資を行うことを認めたり、不動産や非上場株式なども信用取引の担保として認めるといったような、かなり強引なことが行われています。中国当局としてはなんとしてもこの暴落を止めたいと言うことでしょう。
しかし、中国当局の思惑どおりに行かず、この発表後の7月2日(木)も、さらに7月3日(金)も大幅続落となりました。中国本土市場は個人投資家が売買の大きな部分を占める市場で、最近の株価急騰で過度の信用取引や借金をして株を買っていた個人投資家が資金の返済を迫られ、パニックに陥っている様子が伝わってきます。この状況を受け、7月4日(土)の遅くには中国証券業協会が市場安定化基金を設置すると発表。国内の証券会社21社が2.4兆円を基金に出資して株を買い支える意向を発表しています(中央銀行も資金を提供する模様です)。これを受けて今週の中国本土市場は反発から始まっています。
ちなみに、先週末時点で上海総合指数は50日線移動平均線からの下方乖離率が20%にまで達し、過去の大暴落時で反発のメドとなるところまで下がったと見ることも出来ます。この50日移動平均線からの下方乖離率20%というのは暴落時の短期反発をするポイントを探る1つの目安となります。たとえば2008年のサブプライムバブル崩壊時の上海総合指数もそうでしたし、1990年の日経平均バブル崩壊時、あるいは2000年のITバブル崩壊時のナスダックの一度目の反発地点も、この地点が1つのポイントとなりました。そこに来て、更に荒療治とも言える株価対策が取られていますので、株価は反発すると思います。もっとも、中長期的に見ると、この中国政府の「荒療治」が功を奏して株価が大きく上昇しても、その後に株価が下がってきたとき、それを中国当局はどうするのか、中長期的に中国当局はますます難しい判断に迫られそうです。
一方、香港株も概ね中国本土市場と同じような株価展開となりましたが、下落幅は比較的少なく済んでおり、テンセント(00700)などの大型株はここ1ヶ月でみるとほとんど下がっていません。中国工商銀行(01398)も下がってはいますが、これは配当落ちの影響も大きく、実質的な下落幅は限定的です。
今後の見通しですが、やはり、中国本土株がどのように推移するかが大きなポイントとなるでしょう。期待したい1つのパターンが、2012年~2015年までの東証マザーズ指数のような値動きになることです。東証マザーズ指数も上海総合指数と同じように、個人投資家の動向が大きく影響する特性があります。実際のところ、2012年末から2013年5月まで(アベノミクス初期)の東証マザーズ指数は、今回の上海総合指数の急騰よりも短期間で大きく上昇し、2013年5月の暴落も今の上海総合指数同様、激しいものでした。しかしその後は長い調整のあと、再び、200日移動平均線をサポートラインとして上昇基調に転じています。もちろん、このような株価推移になるためには中国政府が行っている金融緩和や景気対策によって中国経済が回復していくことが必要になるのは言うまでもありません。しかし、上海総合指数が200日移動平均線を割り込んでいないこと、PERで見たときに本当のバブル水準(PER約50倍)よりも相当手前の時点で暴落が起こって、現在では2015年予想PERで約15倍と割安感も出てきたこと、中国当局が引き続き金融緩和政策をとっていることなどを考えれば、まだ十分期待できるところと思います。
コラム執筆:戸松信博