昨日のつぶやきで時代劇のことを書きましたが、今夜からフジテレビで「怪談百物語」という本格派の時代劇が始まるそうです。エースディレクター、人気脚本家、豪華出演者とかなりの力の入れようのようなのですが、気になることが一つあります。撮影媒体はビデオでしょうか、フィルムでしょうか。
最近のテレビドラマは殆どビデオカメラで撮られています。水戸黄門のような時代劇も今ではビデオです。ビデオの方が機材も軽く、現像というプロセスもないし、いろいろと機動的で便利なのでしょう。撮った作品の保管も楽です。しかしビデオとフィルムの間には、映像上決定的な違いが一つあると思っています。それは「風化感」とでも言うべき独特の味です。フィルムは所詮塩化銀の分子がプラスチック膜の上に並んでいる立体的な物理構造物ですから、その再現性には限界があり、ドアの取っ手や石仏が徐々に風化して丸くなっていくように、ディテールが甘くなります。特に暗い部分の表現の喪失の具合が、何とも言えない時代感を醸しだし、それが時代劇にとってはとても重要な要素だと、私は思っています。いい時代劇を撮るには、まずフィルムを使うという基礎的な部分からの設計が肝心です。さて今晩のスーパー時代劇、ビデオかフィルムか興味津々です。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。