先週の中国株ですが、上海総合指数と香港ハンセン指数は続伸、深セン総合指数と創業板指数は反落となりました。先週発表された経済指標は概ね中国経済の弱さを改めて印象づける数字となりました。中国の2015年1-3月期のGDP成長率は、2014年10-12月期の7.3%増を下回り、6年ぶりに7.0%増と低成長となりました。また、中国の3月の輸出は-14.6%と市場平均予想の+9.0%や2月実績の+48.3%を下回り、輸入も-12.7%と2月実績の-20.5%は上回ったものの、市場平均予想-10.0%を下回りました。3月の新規人民元建て融資額は1兆1800億元と、市場平均予想の1兆400億元や2月実績の1兆200億元を上回ったものの、3月の中国小売売上高(前年同月比)は+10.2%と市場平均予想の+10.9%や1-2月実績の+10.7%を下回り、鉱工業生産も5.6%増と市場平均予想の+7.0%、1-2月実績の+6.8%を下回りました。

この一連の弱い経済指標に、一時的に株価が弱含む場面はあったものの、引き続き金融緩和策や景気刺激策への期待感が高まり、上海総合指数は週末にかけて大きく上昇しました。しかし、4月17日(金)の取引終了後に中国証券監督管理委員会(CSRC)が資産運用会社(機関投資家)に空売りを認め、その対象銘柄を拡大すると共に、信用取引に関する規制を強化する(具体的には信用取引の資金源となっていた「アンブレラ型投資信託」の一部を禁止)発表を行いました。これは明らかに加熱しすぎた株式市場を落ち着かせる市場冷却化策です。似たような事は2015年1月にもあり、このときは証券会社に信用取引に関する調査が入りました。結果として1月19日(月)の上海総合指数は-7.7%も急落して3,100ポイントを割り込み、2月まで調整が続きました。

以前もお伝えしましたが、中国政府傘下の研究機関は上海総合指数がようやく2,500ポイントを超えてきた2014年末に、2015年末に同指数が5,000ポイントに達するとの予想を発表しています。そして徐々に金融緩和や景気刺激策の発表されていき、上海総合指数は3ヶ月と少しで4,300ポイントに達しました。政府系調査機関が1年後に株価が2倍になると予想すること自体、ありえないことだと思いますが、このままでは夏までに目標の5,000を超えそうな勢いです。このため、早すぎるピッチに冷却期間を設けようとしたのでしょう。自然な市場原理の元では、1年後の株価など予想できるはずがないのですが、中国では予想というより計画目標のような形で進んでいる印象です。

一方、香港株も中国本土マネーの流入が続き、香港ハンセン指数が8年ぶりに2万8000ポイントを突破するなど、堅調でした。しかし、前述の通り、中国当局が市場冷却化策を発表したため、香港市場もやはり、今週からは調整局面に入るものと予想されます。もっとも、中国人民銀行は4月19日(日)に預金準備率を1%引き下げており、中国政府の金融緩和や景気刺激策への姿勢は変わっていません。また、中国当局も株価上昇を警戒しているのではなく、急騰を問題視しているだけと思われます。したがって、今週から予想される調整をこなしたあとは、再び中国株・香港株は上昇基調に入れると思います。

コラム執筆:戸松信博