先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は揃って続伸となりました。中国本土指数は引き続き金融緩和や景気刺激策への期待感から年初来高値を更新。上海総合指数は7年1ヶ月ぶりに4000ポイントの大台を回復しています。先週は一時、利益確定売りなどから株価が弱含む場面もあったのですが、4月10日(金)に発表された3月の消費者物価指数が+1.4%と、市場平均予想の+1.3%よりは若干高かったものの、2月実績+1.4%とさほど変わらない水準であったことから、金融緩和を行う余地があることが改めて認識され、4月10日(金)に力強く上昇しました。なお、同日に発表された3月の生産者物価指数も-4.6%と、市場平均予想の-4.7%や2月実績の-4.8%を共に下回っています。
一方で、先週は香港市場に中国本土マネーが流入して急騰した他、4月10日(金)に上海・深センのB株市場(通常は閑散な外国人主体の市場)も売買停止中の16銘柄を除く全88銘柄がストップ高をつけました。この背景には中国の証券市場の制度改革があります。2014年11月に滬港通(上海市場と香港市場の相互株取引制度)が開始されたわけですが、開始以来低調な売買が続き、設定されていた一日当たりの限度額を遙かに下回るのが常でした。しかし、イースターと清明節の連休が明けた4月8日(水)は上海から香港への買越額が、制度開始後、初めて限度一杯に達し、場中で売買がストップされました。4月8日(水)の香港市場の売買代金は2007年に記録した過去最高を大幅に上回る2,500億HKドルにまで膨らみました。まさに中国人の香港株爆買いです。
香港市場と中国本土市場、あるいは中国本土市場の中でもA株とB株に同時上場している銘柄は多く、そのほとんどでA株の方が大幅な割高状態となってきました。このことで中国本土投資家が割安な香港株やB株を買い漁る動きが起こっているわけです。「一物二価」という「歪んだ証券市場」を作ってきた中国の制度が正常化・健全化しているとも言え、現在の香港は、歴史的な動きの真っ只中にあるという様子です。また、中国政府がこの中国株全体の上昇を容認する姿勢を見せていることもこの動きに拍車をかけています。国営の新華社通信は4月6日(月)の記事で、証券当局が(A株市場における)IPOを新たに認可したものの、これが株価上昇の勢いを阻むことはないとする強気の見通しを示しています。この背景には、株価上昇が続けば中国政府が推し進めている国営企業の改革が一層やりやすくなることがあるのだと思います。したがって、当面、中国株が強い状況は継続すると見ています。
今週は4月13日(月)に中国の3月の輸出と輸入、3月の新規人民元建て融資額が,4月15日(水)に3月の中国小売売上高(前年同期比)、鉱工業生産がそれぞれ発表されます。
コラム執筆:戸松信博