信じられません。言葉を失います。銀行・生保間の資本の持ち合いが、この一年間で約2兆2000億円から更に一割ほど増えたそうです。お互いに資本を出し合って自己資本を充実させるという手法は、ラウンド・トリップというか、不透明なものを感じます。企業がある人にお金を貸し付けて、そのお金でその企業に出資させると、それは「仮装払い込み」(いわゆる見せ金)といい商法違反で増資になりません。
銀行間で資本の持ち合いをしようとしても、それも原則として資本の充実とは勘定されません。しかし例えば劣後債を発行日の翌日以降に購入して持ち合うことにすると、それは資本の充実になるそうです(発行日取引の場合は勘定できません)。しかし銀行・生保間に至っては制限がありません。金融庁は「ルール上認められている」として問題視してないそうですが、このようなルール自体を問題視しないことを私は問題視します。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。