今日からペイオフ解禁です。しかしペイオフ解禁の本質とは一体なんでしょう?かつて土地バブル華やかし頃、銀行は積極的に土地を担保にとっては融資をしました。或いは地揚げによって土地はどんどん買われていきました。あの山この畑に億単位の値段が付き、融資もしくは売却によって得られたお金の多くは、そのまま銀行に「預金」として預けられた訳です。バブルが弾け、土地の値段は下がり、銀行の資産は目減りしましたが、預金の元本額は一切目減りしませんでした。資産側と負債側が平衡を保ちながら目減りすれば「不良債権」問題は起きません。片一方だけが目減りしたので、バランスシートがバランスしなくなった。これが不良債権問題であり、その解法が預金の元本を資産の減り方に応じて払い戻そうという、いわゆる「ペイオフ」の解禁です。
家計がバブル資産を高値で売り抜けた例は、世界史的にも日本以外に例を見ません。ある意味でペイオフの解禁は、税金の投入による例外的な解法を原理・原則に戻すことであり、即ち銀行に対する債権者(預金者)のリスクを納税者に負わせないでそのまま通常の会社のように債権者に負わせることですから、必然の流れだと考えています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。