好決算でも株価下落?「決算好感度指数」で探る投資家の本音
3月期決算企業の第2四半期決算発表が本格化しています。企業が今期の通期業績計画を上方修正すると、好材料として株価が上昇することがあります。一方で、上方修正がすでに株価に織り込まれていたり、事前の期待に届かなかったりすると、決算発表後に株価が下落するケースも見られます。
このように、決算発表後の株価の動きには、業績の良し悪しだけでなく、投資家がその業績をどのように評価しているかが表れます。
では、足元の株式市場では、企業の決算発表を好意的に受け止める投資家が多いのでしょうか。それとも、業績に対する期待が高く、好決算でも株価が上がりにくい状況なのでしょうか。
そこで今回は、決算発表前後の株価反応を集計し、企業業績に対する投資家の評価を数値化する独自の指標「決算好感度指数」を使い、足元の株式市場の状況を探ってみたいと思います。
決算発表前後の株価反応をどのように数値化するのか?
「決算好感度指数」と、その基礎となる「EAR」
それでは、「決算好感度指数」の仕組みを解説しましょう。
決算好感度指数は、企業の決算発表に対する投資家の評価を、株価の動きから捉えるものです。その基礎となるのが「EAR(決算発表時の超過リターン)」です。
EARとは、Earnings Announcement Return(決算発表時収益率)の略称で、決算発表前後の株価騰落率が、市場全体の動きをどの程度上回ったか、あるいは下回ったかを示す指標です。10月14日付の本連載「株価も業績も強い銘柄を狙え!『ダブルシグナルEAR戦略』の実力」では、EARを活用した個別銘柄の投資戦略を紹介しました。今回は個別銘柄の選別ではなく、市場全体の投資家心理を捉えることが目的なので、EARがプラスかマイナスかというシンプルな情報に注目します。
決算発表前後の3営業日分の株価とTOPIXを比較する
具体的なEARの計算方法を説明しましょう。
まず、決算発表の前日、発表当日、翌日の合計3営業日の株価騰落率を計算します。ただし、株価が上昇していても、市場全体がそれ以上に上昇していれば、決算発表に対する評価が良好だったとは言い切れません。そこで、個別銘柄の3営業日の累積騰落率から、同じ期間のTOPIXの累積騰落率を差し引きます。
こうして求めたEARがプラスであれば、決算発表前後の株価反応が市場平均を上回ったことを意味します。反対に、マイナスであれば、市場平均を下回ったことになります。
具体的な計算例を図表1と図表2で見てみましょう。
図表1は、決算発表前後の株価反応が良好だったケースです。決算発表前日から翌日にかけて株価が3営業日連続で上昇し、累積騰落率はプラス5.0%となりました。一方、同じ期間のTOPIXはプラス1.0%だったため、EARはプラス4.0%ポイントとなります。つまり、決算発表に対する投資家の評価が良好だったと考えられます。
一方、図表2は、株価反応が低調だったケースです。決算発表前日と当日は株価が上昇したものの、発表翌日に大きく下落し、3営業日の累積騰落率はマイナス4.0%となりました。同じ期間のTOPIXはプラス1.0%だったため、EARはマイナス5.0%ポイントとなります。こちらは、決算発表に対する投資家の評価が厳しかったと考えられます。
業績の下方修正でEARがプラスになる理由
では、業績が下方修正されるなど、業績の勢いが弱まっている場合はどうでしょうか。
通常、業績の下方修正は株価にとって悪材料となります。しかし、下方修正がすでに株価に織り込まれていたり、事前の懸念ほど業績が悪化しなかったりすると、悪材料が出尽くしたとの見方から、決算発表後に株価が上昇することもあります。
この場合、業績自体は悪化していても、株価がTOPIXを上回って上昇すればEARはプラスとなります。つまり、EARがプラスであることは、必ずしも企業業績が好調であることを意味しません。業績に対する投資家の評価が事前の懸念よりも良好だったことや、先行きへの安心感が広がったことを示している場合もあるのです。
このように、EARは業績そのものの良し悪しではなく、決算発表に対する投資家の受け止め方を捉える指標といえます。
このように、EARを使えば、決算発表に対する投資家の評価を、株価の動きから数値化できます。
決算好感度指数は、EARがプラスの銘柄の割合で算出
それでは、個別銘柄のEARを使って、どのように市場全体の投資家心理を捉えるのでしょうか。
今回の分析では、東京証券取引所が算出するTOPIX500の構成銘柄を対象としました。TOPIX500は、東証プライム市場の銘柄を中心に、時価総額や流動性などを基準として選ばれた500銘柄で構成される株価指数です。日本の株式市場を代表する主要企業の決算に対する評価を捉えるため、この500銘柄に注目しました。
具体的には、各銘柄について直近の決算発表時のEARを計算し、EARがプラスの銘柄の割合を「決算好感度指数」としました。
例えば、500銘柄のうち300銘柄のEARがプラスであれば、決算好感度指数は60となります。反対に、EARがプラスの銘柄が200銘柄であれば、指数は40となります。
つまり、決算好感度指数が50を上回れば、決算発表に対する株価反応が良好だった銘柄が過半数を占めることを意味します。一方、50を下回れば、株価反応が市場平均を下回った銘柄の方が多いことになります。
こうして、個別企業の決算に対する株価反応を集計することで、企業業績に対する投資家の評価が市場全体でどの程度良好なのかを捉えようというものです。
なお、決算好感度指数の詳しい算出方法は、文末の(参考)にまとめています。
決算好感度指数は42.5%、企業決算への評価はやや慎重
それでは、現在の決算好感度指数はどのような水準にあるのでしょうか。
指数が高いほど株価が上がりやすいわけではない?
決算好感度指数は、EARがプラスとなった銘柄の割合を0~100%で表したものです。50%を上回れば、決算発表前後の株価反応がTOPIXを上回った銘柄が過半数を占め、企業決算に対する投資家の評価が比較的良好であることを示します。反対に、50%を下回れば、決算に対する評価が慎重になっていると考えられます。
具体的な指数の水準と市場心理の関係を示したのが図表3です。
決算好感度指数が40未満の場合は、決算への失望や業績懸念が広がっている状態と考えられます。40以上50以下では、決算への評価がやや慎重な状態です。一方、50を超えて55以下では、決算への評価が良好な状態と捉えられます。
興味深いのは、55を超える場合です。決算への好評価が市場全体に広がっている一方、投資家の期待が高まりすぎている可能性もあります。そのため、必ずしも指数が高いほど、その後の株価が上昇しやすいわけではありません。
日経平均の弱含みを示唆? 足元の「42.5%」をどう読むか
注目したいのは、足元の決算好感度指数が42.5%となっていることです。これは「40以上50以下」に該当し、企業決算に対する投資家の評価がやや慎重な状態にあることを示しています。
つまり、決算発表前後の株価反応がTOPIXを上回った銘柄は半数に届かず、企業業績に対する投資家の期待が必ずしも強いとはいえない状況です。
また、過去の株価との関係を検証すると、決算好感度指数が40以上50以下の局面では、その後の日経平均株価が弱含む傾向も見られました。足元の指数の水準は、今後の株式市場を考えるうえでも注目しておきたいところです。
底打ちの兆しあり、本格好転の目安は「50%超え」
図表4は、2026年に入ってからの決算好感度指数と日経平均株価の推移を示したものです。決算好感度指数は8月に40%台前半まで急低下しましたが、その後は下げ止まり、足元は緩やかな上昇傾向にあります。
これは、第2四半期決算の発表が本格化するなか、決算発表前後の株価反応がTOPIXを上回る銘柄が増えていることを反映していると考えられます。企業決算に対する投資家の評価が、少しずつ改善している可能性があります。
もっとも、現在の42.5%という水準は、依然として50%を下回っています。今後、決算好感度指数が50%を上回ることが、企業決算に対する市場心理の好転を判断する一つの目安となるでしょう。
第2四半期決算の発表が続くなか、決算好感度指数の回復がどこまで進むのか注目したいところです。
参考:決算好感度指数の算出方法
1.分析対象銘柄
TOPIX500の構成銘柄を対象とする。TOPIX500は、東京証券取引所が算出する株価指数で、TOPIXの構成銘柄のうち時価総額や流動性などを基準に選定された500銘柄で構成される。
分析には各時点のTOPIX500構成銘柄を用い、構成銘柄の変更も反映する。
2.決算発表時の超過リターン(EAR)
各銘柄について、決算発表の前営業日、発表当日、翌営業日の3営業日の累積騰落率を計算する。
同じ期間のTOPIXの累積騰落率を差し引き、EARを算出する。
EAR(%ポイント)=個別銘柄の累積騰落率(%)-TOPIXの累積騰落率(%)
なお、個別銘柄の騰落率には配当込み収益率を使用する。決算発表日が休場日の場合は、発表直前の営業日と発表直後の営業日の2営業日を対象とする。
3.直近EARの利用
各銘柄について、決算発表前後の対象期間が終了した時点でEARを確定させる。
その後は、次の決算発表に伴うEARが確定するまで、直近に確定したEARを使用する。
これにより、各営業日時点で利用可能な直近の決算発表に対する株価反応を把握する。
4.決算好感度指数の算出
各営業日について、TOPIX500構成銘柄のうち、直近EARがプラスの銘柄の割合を計算する。
決算好感度指数=EARがプラスの銘柄数÷EARが算出可能な銘柄数×100
EARがゼロの銘柄はプラスに含めず、EARを算出できない銘柄は集計対象から除外する。
指数は0~100の値を取り、50を上回ればEARがプラスの銘柄が過半数を占めることを示す。
