3月期決算企業の第2四半期決算発表が本格化しつつあります。11月中旬にかけて決算発表が相次ぐなか、注目したいのが会社側の通期業績計画の上方修正と、それに対する株価の反応です。

今回は、第2四半期決算での営業利益の業績上方修正に加え、決算発表前後の株価の動きにも着目します。過去のデータをもとに、業績面と株価面の2つの条件を組み合わせた「ダブルシグナルEAR戦略」の有効性を検証します。

決算発表前後の株価の強さに注目するEAR戦略

まず、今回の戦略の基本となるEARについて説明しましょう。EARとは、Earnings Announcement Return(決算発表時収益率)の略称で、決算発表前後の株価の動きに着目する指標です。もともとは学術研究の分野で用いられてきたもので、米国のブラントらによる2008年の論文「Earnings Announcements are Full of Surprises(決算発表には多くのサプライズが含まれる)」などでも、その後の株価リターンとの関係が分析されています。

EAR戦略の基本的な考え方はシンプルです。決算発表日の前営業日、当日、翌営業日の3営業日間に株価が市場全体を上回って上昇した銘柄は、その後も良好な株価パフォーマンスを示しやすいというものです。こうした特徴から、EARは機関投資家などプロの投資家の間でも注目され、銘柄選別の手掛かりの一つとして利用されています。

では、なぜ決算発表前後の株価の動きが、その後の株価パフォーマンスを予測する手掛かりになるのでしょうか。

市場の期待と現実の「ギャップ」を捉える

まず、好決算を発表した企業の場合を考えてみましょう。好決算への期待から発表前に株価が上昇し、発表後も決算内容が評価されて上昇することがあります。一方、好決算であっても、すでに市場の期待が株価に織り込まれていれば、発表後に材料出尽くしで下落することもあります。

つまり、重要なのは決算内容が良いかどうかだけでなく、市場が事前に期待していた水準を上回る内容だったかどうかです。好決算を受けて株価がさらに上昇する銘柄は、市場の想定以上に業績の勢いが強い可能性があります。こうした企業では、その後も業績が市場予想を上回って伸びることが期待され、中長期的な株価上昇につながると考えられます。

一方、決算内容が悪くても、株価が上昇するケースがあります。例えば、業績悪化への懸念から事前に株価が大きく下落していた場合です。実際の決算が市場の懸念ほど悪くなければ、悪材料が出尽くしたとの見方から買い戻しが進むことがあります。こうした銘柄は売られ過ぎが修正される過程で、その後も株価が上昇する可能性があります。

このように、EAR戦略は、決算内容そのものを細かく分析するのではなく、決算発表前後の株価の動きから、市場の期待と実際の決算内容とのギャップを捉えることを狙った戦略と言えます。

業績の裏付けを加えた「ダブルシグナルEAR戦略」へ

ただし、決算内容が悪くても株価が上昇する銘柄については、注意も必要です。悪材料の出尽くしによる株価上昇は、必ずしも業績の改善を意味するわけではありません。実際に業績悪化が続けば、一時的な株価の反発に終わる可能性もあります。

そこで今回は、EARによる株価の強さに加えて、業績面でも前向きな変化が確認できる銘柄に絞り込むことにしました。それが、今回考案した「ダブルシグナルEAR戦略」です。

「ダブルシグナルEAR戦略」の具体的な銘柄選定方法

それでは、今回考案した「ダブルシグナルEAR戦略」の具体的な銘柄選定方法を説明しましょう。図表1は、2026年3月期の第2四半期決算発表を例に、業績面と株価面の2つの条件を示したイメージ図です。

【図表1】ダブルシグナルEAR戦略の銘柄選定イメージ ― 決算発表前後の株価反応と業績上方修正
出所:マネックス証券作成

条件①:業績面からの裏付け(通期予想の上方修正)

まず、図表1の右側の業績面では、会社側が発表する通期営業利益予想の上方修正に注目します。具体的には、第1四半期決算発表時点の通期営業利益予想と、第2四半期決算発表時点の同予想を比較し、後者が上回っていることを条件とします。

第2四半期は年度の折り返し地点です。この段階で会社側が通期営業利益予想を引き上げることは、企業自身が当初よりも業績の先行きを前向きに評価していることを意味します。つまり、EARによって株価の強さを確認するだけでなく、業績面でも改善の裏付けがある銘柄を選ぶわけです。

条件②:株価面での厳しい基準(3営業日連続でTOPIXを上回る)

次に、EAR戦略の根幹となる株価面の条件です。ここでは、一般的なEAR戦略よりも厳しい基準を設けています。

通常のEAR戦略では、決算発表日の前営業日、当日、翌営業日の3営業日間の累積株価騰落率を計算し、その間の市場全体の騰落率を上回っていれば、株価反応が良好な銘柄と判断します。しかし、この方法では、3営業日のうち1日だけ大きく上昇し、残りの2日間は市場全体を下回っていても、3営業日合計で市場を上回れば対象に含まれます。

そこで今回の戦略では、3営業日のそれぞれで、個別銘柄の株価騰落率がTOPIXの騰落率を上回ることを条件としました。3営業日のうち1日でもTOPIXを下回れば、対象から除外します。

図表1の左側では、決算発表日の前営業日に個別銘柄が2.0%上昇したのに対し、TOPIXは0.5%の上昇にとどまっています。決算発表当日も個別銘柄は3.0%上昇し、0.3%下落したTOPIXを上回りました。さらに、決算発表翌営業日も個別銘柄は1.5%上昇し、TOPIXの0.6%上昇を上回っています。このように、3営業日すべてでTOPIXを上回る銘柄を選びます。

なぜ「3日連続TOPIXを上回ること」にこだわるのか?

では、なぜ3営業日すべてでTOPIXを上回ることにこだわるのでしょうか。まず、決算発表前に株価が上昇することは、好決算に対する市場の期待が高まっている可能性を示しています。そして、決算発表を迎えた後も株価が上昇することは、実際に発表された決算内容が、その期待をさらに上回った可能性を示唆します。

ここで注意したいのが、企業によって決算発表の時間帯が異なることです。取引時間中に発表する企業もあれば、取引終了後に発表する企業もあります。例えば、取引終了後に決算を発表した場合、その内容が本格的に株価へ反映されるのは翌営業日です。したがって、決算発表翌営業日の株価反応も確認する必要があります。

仮に、決算発表前から好決算への期待で株価が上昇していたとしても、実際の決算が期待ほど良くなければ、発表後に材料出尽くしで株価が下落することもあります。反対に、決算発表後もTOPIXを上回る上昇が続くのであれば、事前の期待を上回る好材料が示された可能性があります。

つまり、決算発表前の期待による株価上昇に加え、決算発表後もその期待を上回る評価が続いている銘柄を選ぼうという考え方です。こうした銘柄では、市場が想定していた以上に業績の勢い、すなわち業績モメンタムが強く、その後も業績見通しの改善が続くことが期待されます。

もちろん、3営業日すべてでTOPIXを上回ったからといって、必ずしも好業績が続くとは限りません。しかし、3営業日合計の騰落率だけで判断する場合と比べて、一時的な大幅上昇だけに依存する銘柄を除外できる点に、この条件の特徴があります。

株価の強さに「業績の裏付け」を掛け合わせる

さらに、今回の戦略では、会社側の通期営業利益予想が上方修正されていることも求めます。これにより、単なる悪材料出尽くしや買い戻しによる株価上昇ではなく、株価面でも業績面でも前向きなシグナルが確認できる銘柄に絞り込むことを狙っています。

これが「ダブルシグナルEAR戦略」の基本的な仕組みです。

「ダブルシグナルEAR戦略」は翌年3月末までの保有で良好な結果

それでは、過去のデータを使って「ダブルシグナルEAR戦略」の有効性を検証してみましょう。

図表2は、2021年3月期から2026年3月期までの6年間について、第2四半期決算発表時に今回の2つの条件を満たした銘柄の、その後の株価パフォーマンスを示したものです。具体的には、決算発表日の翌営業日の終値を起点として、1ヶ月後、12月末、翌年3月末までの騰落率を計算し、同じ期間のTOPIX騰落率を差し引いた超過リターンを集計しています。

【図表2】これまでの第2四半期決算での「ダブルシグナルEAR戦略」のパフォーマンス
注1: 集計期間は2020年度~2025年度。横軸の決算期は、それぞれ各決算期の第2四半期決算を対象とする。例えば、2026年3月期は2025年度の第2四半期決算を示す
注2: 対象は各年度のTOPIX構成銘柄のうち、3月期決算企業。ただし、金融4業種(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)を除く
注3: 第1四半期決算発表時点の通期営業利益の会社予想に対し、第2四半期決算発表時点の同予想を上方修正した銘柄を対象とする。さらに、第2四半期決算発表日の前営業日、当日、翌営業日のそれぞれで、個別銘柄の株価騰落率がTOPIX騰落率を上回った銘柄に限定する
注4: リターンは、第2四半期決算発表日の翌営業日の終値を起点として、1ヶ月後、12月末、翌年3月末までの騰落率を算出。各銘柄の騰落率から同期間のTOPIX騰落率を差し引いた超過リターンを用いる。図中の数値は、各決算期に該当する銘柄の超過リターンの単純平均
出所: QUICK Workstation AstraManagerを用いて、マネックス証券作成

年末までの保有でも安定した超過リターン

まず、1ヶ月後までの超過リターンを見ると、6年間のうち5年間でプラスとなりました。2021年3月期のみマイナス0.4%でしたが、それ以外の年度ではプラスとなっています。もっとも、超過リターンは最大でも2022年3月期の2.8%であり、短期的なパフォーマンスには年度によるばらつきも見られます。

次に、12月末までの超過リターンを見ると、こちらも6年間のうち5年間でプラスとなりました。2021年3月期はマイナス0.2%でしたが、2022年3月期は2.7%、2023年3月期は2.0%、2024年3月期は2.3%、2025年3月期は0.4%、2026年3月期は2.4%となっています。年末までの保有では、比較的安定してTOPIXを上回る結果が確認されました。

翌年3月末までの保有なら6年連続でプラスに

さらに注目したいのが、翌年3月末まで保有した場合です。6年間すべてで超過リターンがプラスとなりました。特に2023年3月期は8.5%と高い超過リターンを示しています。また、2024年3月期は4.1%、2026年3月期も4.5%となりました。2021年3月期や2025年3月期では1.1%にとどまったものの、いずれもTOPIXを上回っています。

この結果からは、今回の戦略では、決算発表直後の短期的な株価上昇を狙うだけでなく、翌年3月末まで保有することが有効である可能性がうかがえます。

なぜ長期保有でパフォーマンスが向上するのか?

なぜ、保有期間を延ばすことで良好なパフォーマンスが期待できるのでしょうか。

考えられる理由の一つは、業績上方修正の効果が、その後も株価に反映されていくことです。第2四半期の段階で通期営業利益予想を引き上げた企業は、その後も好調な業績を維持する可能性があります。さらに、決算発表前後の株価反応が強い銘柄では、市場が想定していた以上の業績モメンタムが存在し、その評価が時間をかけて株価に織り込まれていくことも考えられます。

特に注目したいのは、翌年3月末までの超過リターンが6年間すべてプラスとなったことです。株価の強さと業績上方修正という2つの条件を組み合わせた「ダブルシグナルEAR戦略」は、年度末に向けた投資戦略として有効性が期待できることを示す結果と言えるでしょう。

そこで今回の「ダブルシグナルEAR戦略」では、第2四半期決算発表後に条件を満たした銘柄を選び、翌年3月末まで保有することを基本的な投資期間として想定します。今年の第2四半期決算であれば、2027年3月末までの保有を念頭に置いた投資戦略となります。

実践編:ツールを使って該当銘柄の「業績予想修正」「株価データ」を確認する方法

2026年7月23日付の記事「第1四半期決算で探す『成長加速株』の見つけ方と4つの条件」で取り上げていますので、こちらをご参照ください。

また、決算発表日の前営業日、当日、翌営業日の3営業日間の累積株価騰落率のチェックには、銘柄スカウターの個別銘柄のページの「株価を見る」で株価データを確認できます。ぜひご利用ください。