円安阻止なのに円以外の通貨に対して米ドル急落
ユーロ/米ドルが大きく上昇してきた。その始まりは、日本の通貨当局による円安阻止介入の再開、そして日米協調による円買い介入だった(図表1参照)。これは、1月下旬に円安けん制で日米当局が「レートチェック」に動いたことを受けた値動きに似ている。円安けん制が、円以外通貨に対する米ドル安拡大のきっかけになったわけだ。
今回の場合も、円安阻止が目的だったとみられる日米協調介入だったにもかかわらず、米ドル/円は間もなく米ドル高・円安に戻ったものの、むしろ円以外の通貨、ユーロなどに対しては米ドル高への戻りも限られ、これまでのところ米ドル安が広がる展開となった。
投機筋のユーロ買い・米ドル売りは損失に転換か
このようなユーロ/米ドルの上昇を受け、ユーロ/米ドルは足下で、1.156米ドル程度にある120日MA(移動平均線)を大きく上回ってきた(図表2参照)。この120日MAは、代表的な投機筋であるヘッジファンドの損益分岐点の目安とされている。その意味では、ヘッジファンドによるそれまでの米ドル買い・ユーロ売りは含み損に転落した可能性があるだろう。
ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計における投機筋のユーロ・ポジションは、8月18日現在で5.9万枚の売り越しだった(図表3参照)。すでに確認したように、ユーロ/米ドルが120日MA以上で推移した場合、ユーロ売りは損失に転落し、損失の拡大を回避するため、ユーロの買い戻しや米ドル売りが入りやすくなりそうだ。
1月下旬に米国が円安けん制で予想外の「レートチェック」に動いた後も、米ドル売りは急速に拡大した。ただ当時の投機筋のポジションはユーロ買い越し・米ドル売り越しだったのに対し、最近では確認できる範囲で最新の先週(8月17日週)までを見ると、ユーロ売り越し・米ドル買い越しとなっていた。
その意味では、損益分岐点を上回るユーロ高・米ドル安で推移した場合、ユーロ買い・米ドル売りが拡大する余地は、1月下旬の「レートチェック」後より大きくなる可能性もあるのではないか。
協調介入でなぜ米国は米ドル売り介入しなかったのか?
日米は、7月末の円安阻止に向けた協調介入を行ったと説明したが、米当局は米ドル売り・円買いではなくユーロ売り・円買いだったとみられている。なお、前回の円安阻止の日米協調介入は1998年6月に行われ、このときは、米当局による米ドル売り・円買い介入だったが、今回はなぜユーロ売りだったのか。
これは、米当局が米ドル売り介入を行った場合、円安阻止の目的に反して米ドルが急落しかねないことを懸念したためと考えられる。今回米当局は米ドル売り介入を行わなかったものの、それでも円以外の通貨に対して米ドル安が拡大した結果を見る限り、「米ドル安を恐れて米ドル売り介入できない」との見方は、やはり正しいのではないか。
