米利上げでも止まらなかった1995年にかけての米ドル安
1993年から始まった米クリントン政権は、東西冷戦終了を受けて最優先課題を日米貿易不均衡是正に位置づけ、円高容認政策に動いた。これにより、米ドル/円は1993年1月の125円から、1994年には戦後初めて1ドル=100円を割り込む円高となり、「超円高」が実現した。
その一方で、米国では1994年から利上げに転じた。これを受けて、日米金利差(米ドル優位・円劣位)は急拡大に向かったが、それでも米ドル安・円高は止まらず、「超円高」となった(図表1参照)。
5年MAを3割下回る=1995年の記録的な米ドル「下がり過ぎ」
利上げでも止まらない通貨安について、当時その理由とされたのは、米クリントン政権の米ドル安への危機感の薄さだった。クリントン政権は、上述のように日米貿易不均衡是正のために円高を容認していたことから、1ドル=100円割れの米ドル安・円高にも強い懸念を示さず、日米金利差が拡大しても米ドル安・円高は止まらないとの見方が一般的だった。
こうした中で、米ドル/円は過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を3割下回るまで下落した(図表2参照)。これは、少なくとも1990年以降では米ドル/円が最も「下がり過ぎていた」局面だった。
G7をきっかけに起こった米ドル高への「リバーサル」
このような中で発表された1995年4月のG7(主要7ヶ国財務大臣及び中央銀行総裁会議)の共同声明は、以下のような内容となった。「最近の変動は、主要国における基礎的な経済状況によって正当化される水準を超えていることに合意した。彼らは、こうした変動を秩序ある形で反転(英文ではリバーサル)させることが望ましいこと(略)についても合意した」。
「主要国における基礎的な経済状況によって正当化される水準を超えている」とされた「最近の変動」とは、1ドル=100円を割り込んだ円高(米ドル安)、「超円高」を指していることは明らかだった。そして、「基礎的な経済状況によって正当化される水準を超えている」とされた変動は、「秩序ある形で反転させることが望ましい」とされた。それは、米ドル安・円高から米ドル高・円安への反転を意味すると考えられたが、まさにその後実現した。
購買力平価から見た異常な通貨安=1995年の米ドル安と2026年の円安
さて、2022年以降の米ドル高・円安は、1995年の米ドル安・円高とは逆に、5年MAを3割程度上回るものだった。そしてそれは、2024年以降の「異次元緩和」見直しの利上げ局面でも止まらない米ドル高・円安だった。
1995年にかけて展開した米利上げでも止まらない記録的に行き過ぎた米ドル安・円高。一方で2026年にかけて続く日本の利上げでも止まらない記録的な米ドル高・円安。このように見ると、1995年にかけての米ドル安と、最近の円安は似ている面があるのではないか。
そして、もう1つの両者の類似点は購買力平価との関係だ。最近の米ドル高・円安は、日米の消費者物価で計算した購買力平価を5割程度も上回る動きだが、実は1995年にかけての米ドル安・円高は同じ購買力平価を5割程度も下回る動きだった(図表3参照)。
すでに見てきたように、1995年にかけての米ドル安・円高は、G7が「基礎的な経済状況によって正当化される水準を超えている」「秩序ある形で反転させることが望ましい」とした結果、反転に向かった。では5年MAや購買力平価との関係が1995年とはほぼ逆になっている米ドル高・円安も、「基礎的な経済状況によって正当化される水準を超えている」「秩序ある形で反転させることが望ましい」ということなのだろうか。
