社会を少し賢く設計する発想として、ナッジ(肘で軽くつつく)という考え方があります。行動経済学を通じて広く知られるようになった概念で、健康診断を受けやすくする、貯蓄を続けやすくするなど、人間の弱さや迷いやすさを前提にしながら、人々をより良い選択へ自然に導く仕組みです。
一方で、最近目立つのは、その逆の仕組みでしょう。私も最近いつの間にか契約しているサブスクに気づきました。解約しにくい手続き、永久問答のチャットボットなど、かえってストレスを感じる仕組みが増えています。これ必要?というようなAI機能も散見されます。
善意の設計ナッジに対して、こうした人間の注意力や忍耐力を収益化する設計は、スラッジ(ぬかるみ)と呼ばれています。
これからは、どちらの流れも強まりそうです。個人ごとに最適化された誘導や見抜きにくい詐欺など。便利さの名の下で、ますます反射的に動かされかねません。
いつも疑い、立ち止まり、面倒なものを面倒だと言語化しないといけません。答えを出すAIと問いを立てる我々。こちらには賢さが必要で、それは知識量のみならず、批判的思考、疑う力が必要になっています。
