2022年は151→127円、最大24円程度の円高
投機筋の円売りの逆流は、これまでも円安から円高への反転において重要な役割を担ってきた。たとえば、2022年10月は日本の通貨当局による米ドル売り介入をきっかけに151円から2023年1月にかけて127円まで、最大で24円程度も米ドル安・円高に戻すところとなった。この時CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは売り越しが10万枚から2万枚まで縮小した(図表1参照)。
投機筋の円売り越しが急縮小に向かった分岐点の1つが、損益分岐点を割り込んだことだったのだろう。損益分岐点の目安である120日MAはこの当時140円程度だった(図表2参照)。その意味では151円から140円までは、投機筋の円売りポジションはまだ含み益だった可能性がある。そして米ドル/円が140円を割れてきたことで円売りポジションは含み損に転換、このため含み損拡大を回避するための円売りポジションの縮小に伴う円買い戻しが拡大し、それがさらに130円割れへの円高をもたらした一因だったのではないか。
「歴史的円安」161円から急反転した2024年
次に2024年の円安から円高への反転について振り返ってみる。この時はやはり介入をきっかけに7月161円から9月の139円まで、最大22円程度の米ドル安・円高が起こった。この時の投機筋の円ポジション売り越しのピークは18万枚。これはほぼ過去最高規模だったが、それがほとんど1ヶ月程度で消滅した。この時も損益分岐点はやはり重要な役割を果たしたと考えられる。
当時の米ドル/円の120日MAは154円程度。つまり介入をきっかけに161円から下落に転じた米ドル/円だったが、それが154円を大きく割り込むことで、過去最大規模に膨らんでいた円売りポジションの損失拡大懸念が広がり、それが円売りポジション処分に伴う円買い戻しを加速させることでさらなる円一段高を演出したと考えられた。
この局面では、米ドル/円が下落に転じてから約1ヶ月後、投機筋は円買いに転じ、最大で6万枚まで円買い越し拡大に向かった。そして、米ドル安・円高は139円まで広がるところとなった。
円高への反転で分岐点になった120日MAは足下で157円
以上見てきたように、2022年、2024年の介入をきっかけとした円安から円高への反転においては、投機筋の円売りの見直し、さらには円買いへの転換が重要な役割を演じたようだ。そしてその重要な分岐点になったのが、円売りポジションの損益分岐点の目安、120日MAだった。
その120日MAは、足下で157円程度。その意味では、今回はすでに投機筋の円売りポジションに損失拡大の懸念が浮上していることから、さらに157円を大きく割り込むようだと円売りポジションの処分に伴う円買い戻しが一段の円高を後押しする可能性があるだろう。
円安の背景、日本の低金利や財政規律への懸念も議論か
では、それによってどの程度米ドル安・円高に戻るのか。2022年、2024年は、ともに120日MAからさらに1割程度の米ドル/円下落に向かった。今回157円程度の120日MAから1割の米ドル/円下落が起こるなら140円を目指すという計算になる。ただそのためには、投機筋の円売りポジションが消滅し、さらに円買い拡大に転じるような状況が必要ではないか。
ベッセント財務長官は、以前から日本の利上げが後手に回っているとの懸念、また高市政権の財政規律へも懸念を抱いていると見られてきた。これらはいずれも、この間の円安をもたらした要因と見られてきた。今回の来日に伴う高市総理らとの会談では、改めてこれらの見直しについても議論される可能性があり、円高への反転がどの程度になるかに影響することとなりそうだ。
