円安阻止は「日本任せ」だったバイデン前政権

日本の通貨当局は、2022年と2024年に円安阻止の為替市場介入を行った(図表参照)。当時の米国はともにバイデン民主党政権。そうした中で行われた米ドル売り・円買い介入はすべて日本の単独によるもので、時には米ドル売り介入を行う上で、米政府からの了解が得られるかも注目された。

【図表】米ドル/円とWTI(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この点について、「米政府から了解が得られず日本の当局が米ドル売り介入できなくなったのではないか」との見方が広がり米ドル高・円安が大きく進んだのは2024年5~7月だった。きっかけは、当時の米通貨政策の責任者、イエレン財務長官による「為替相場は市場で決まるものであり、為替市場への介入はまれであるべき」との発言だった。

この発言に対して、日本の当局関係者は、「あくまで原則論を語ったものであり、日本の介入を否定したものではない」と説明し、実際に約2ヶ月の中断はあったものの7月には米ドル売り介入が再開された。その意味では、米政府が日本の円安阻止の「障害」になった感じはなかった。逆に、米政府が積極的に日本に対して円安阻止を求めた感じもなかったが、この点がトランプ共和党政権になり大きく変わった可能性がありそうだ。

日米協調「レートチェック」を主導=米政府、円安阻止へ積極関与

2026年1月23日、トランプ政権になってから初めて米ドル高・円安が160円に迫った局面で、為替介入の前段階とされる「レートチェック」を日本の当局が行い、さらに米当局も追随した。そして、この日米協調「レートチェック」について、一部メディアは日本からの要請ではなくベッセント財務長官主導で行われたものと報じた。

米ドル売り介入を行ったわけではなかったものの、米ドル高・円安けん制の「レートチェック」を米政府が容認したということ以上に、むしろ主導した可能性があった。米ドル売り介入などの円安阻止政策発動はあくまで日本政府が主導し、米政府の本音は否定的のようにも見えたバイデン前政権からは、まさに大きく変わったということになるのではないか。

通貨政策でも異例のトランプ政権

米財務省が2025年6月に公表した為替報告書に添えられたベッセント財務長官のコメントの中に、以下のような一節があった。「トランプ政権は、米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策はもはや容認しないと貿易相手国・地域に警告してきた」。

「米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策」の中には、「貿易相手国の過度な通貨安」が含まれていると考えられる。その意味では、「過度な円安を容認しない」ことを実践したのが日米協調「レートチェック」だったと考えると、確かに辻褄は合いそうだ。

行き過ぎた米ドル高是正という1985年プラザ合意の例を別にすると、行き過ぎた円安阻止を米政府が主導した例はこれまでなかった。その意味では、前政権から変わっただけにとどまらず、トランプ政権の通貨政策は、過去に例のない円安阻止への積極的関与という立場かもしれない。