私の母方の祖父は若い頃は大酒飲みだったようですが、晩年は体を壊し、お酒も制限されていました。しかし親戚の中にあまり酒飲みがいなかったものですから、私がたまに田舎に行くとその時の晩酌だけは放免でした。孫と飲んで死んでも本望、などと叔母は言っておりました。まだ大学生のころ、楽しく祖父と二人きりで飲んでいていい塩梅に酔っぱらって来た時に、「叔母さん、ごはん下さい」と言うといきなり祖父にビックリするほど鋭い口調で怒られました。最初は訳が分からなくて当惑したのですが、祖父に言わせるとお酒もごはんも同じお米から出来ているので、一旦ごはんを食べると舌が甘くなってしまいもう酒の味が分からなくなるというのです。なるほど。以来お酒を飲んでいる間はごはん粒やそばなどを口にしなくなりました。たまにまだ飲んでいる間に焼きおにぎりなどを口にしたり、一旦食事をした後にまたお酒を飲んだりしてしまうと、今は亡き祖父に対してとっても恥ずかしい気持ちが起こります。滅多にそんなことしませんが。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。