10月15日に行われた高市氏と米政権「密使」との会談

高市自民党新総裁誕生をきっかけとした153円までの円一段安、「高市円安」は、10月10日の自公連立解消などをきっかけに反転、その流れは先週(10月13日週)一段と広がり、一時149円台まで米ドル安・円高に戻すところとなった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円と52週MA(2000年~)
出所:マネックストレーダーFX

このような米ドル安・円高への動きは、細かく見ると10月15日から加速したようで、この15日には次期新総理有力者の高市自民党新総裁を、トランプ政権1期目に駐日大使をつとめたハガディ上院議員が訪問した日でもあった。米国専門家の間では、ハガディ氏はトランプ米大統領と日本の新総理との会談を控える中での「密使」の可能性が高いと見られていた。その会談後に円高拡大に向かったのは、何か関係があったのか。

同じ保守派ながら経済政策では対立懸念のある高市・トランプ

高市氏は保守的な政治姿勢で知られていることから、外交や社会保障政策ではトランプ米大統領の保守的な考え方と親和性があるとの見方が基本だろう。ただ、そうした中でも、対立する懸念があるのが経済政策だと思われる。

高市氏が主張している「ニュー・アベノミクス」は、第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」からすると、利上げに慎重になることで円安をもたらす可能性があるが、それは貿易相手国の通貨安に神経質なトランプ米大統領の考え方と対立する可能性があるのではないか。

「高市円安」反転にトランプ政権の圧力などはあったのか

米ドル/円はこの数ヶ月、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小への米ドル安・円高の反応がきわめて鈍い状況が続いていたが、いわゆる「高市円安」が153円で一巡、米ドル安・円高に向かった動きは日米金利差縮小に比較的素直な反応でもあった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米金利差(2025年8月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

また、日米金利差で説明困難だったこの数ヶ月の米ドル/円の動きは、「日本の長期金利上昇=円安」で比較的うまく説明できそうだったが、先週(10月13日週)にかけては「日本の長期金利低下=円高」となった(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

トランプ米大統領は、「強い米ドルが望ましいが、米ドル安の方が儲かる」と発言。また、自身が掲げた非関税障壁リスト8項目のトップに貿易相手国の通貨安誘導の意味と見られる「通貨操作」を挙げるなど、異例なほど為替相場に過敏に反応する米大統領と言えそうだ。

一方で、日本の新総理就任が有力視されている高市氏は、上述のようにデフレからの脱却を目指し大幅円安を容認した第2次安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスの継承を自認、「ニュー・アベノミクス」を主張している。

以上のように見ると、トランプ大統領と、高市氏の通貨政策を巡る考え方は対立する可能性があるだろう。そうした中で、トランプ政権の「密使」と高市氏の会談の後から円高の動きとなった関係は少し注目してみたいところではないか。