私は親知らずが4本生えています。それも、きれいに真っ直ぐ、普通に生えています。ネットで調べると、そういう人は全体の2~3割程度のようですが、周りの人に聞く限りでは、その割合はもっと低いように感じます。
私は小さい頃、柔らかいお菓子ではなく堅いおせんべいを食べていたし、おつまみ代わりに煮干しをかじったりもしていたので、顎が発達したのでしょうか。
親知らずが4本ちゃんとあると、面倒くさいのは歯磨きです。かなり奥の歯になるので、口をすぼめて、ぐっとかなり奥まで歯ブラシを突っ込むことになります。その際、舌の根元あたりを圧迫するのか、オエッとなることがしばしばあります。
歯周ポケットの出血検査(BOP)をしても、32本中の4本はどうしても血が出てしまうので、ちょっと不利です。でも、なんとなく愛おしい歯たちです。私にとっては。
親知らずは、英語では Wisdom Teeth といいます。知恵の歯、ですね。私は知恵をちょっと多めに授かっているのでしょうか???
感情的になったり、とてもつらい時、理不尽なことに対応しなければならない時、あるいは何かを恐れる時。そんな時、ぐっと奥歯を噛みしめて耐えて、自分を制御して、社会や自分に対して「正しいことをしよう」とすることがあります。その瞬間、親知らずが私に知恵を授けてくれているのかも知れません。
私の古い友人の一人は、「馬鹿=欲望-知性」だと云いました。これはなかなか深いコンセプトで、私は気に入っています。
私は親知らずを噛みしめて、知恵の力を借りて、馬鹿な行動を取らないように自制しているのかも知れません。
手が掛かるけれど、大切な存在。これからも Wisdom Teeth=親知らずを、大事にしていきたいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。