政権1期目より早い利下げ要求=トランプ米大統領

トランプ米大統領は4月下旬に、自身の利下げ要求に従わないと見ると、パウエルFRB議長の解任を示唆し、実際にその可能性を検討したと見られた。ただ、そうした中で米ドルへの信認低下として米ドル/円が140円を割れるなど急落する中で、トランプ米大統領はパウエル解任検討を否定した。

当時から1ヶ月以上過ぎたものの、トランプ米大統領の利下げ要求に著変はないようだ。一部の報道によると、トランプ米大統領はFRBへ早期の利下げを要求しており、それに従わないパウエル議長に対して、通例以上に早い後任人事を決めることで「無力化」を検討しているという。

注目されるのは、このようなトランプ米大統領の「FRB叩き」は、政権1期目と比べ違和感があるということ。2017~2020年のトランプ政権1期目で、FRBは2018年12月まで、つまり政権発足から約2年間は利上げを続けた(図表1参照)。これに対して、今回は政権発足直後からトランプ米大統領は利下げを要求しているが、何が違うのか。

【図表1】FFレートと米2年債利回り(2017年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

株安への過敏な反応は変わらず=トランプ米大統領

分かりやすい違いは株価だろう。トランプ政権1期目においては、政権発足の2017年1月から2年近く株高傾向が続き、FRB利上げも続いた。しかし2018年末にかけて株価が急落するとFRB利上げも終了、そして2019年半ばからFRBは「予防的利下げ」として利下げを始めた(図表2参照)。

【図表2】NYダウの推移(2017~2020年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、トランプ政権1期目以上に、この2期目においてトランプ米大統領がFRB利下げへの執着が強い感じになっているのは、株安リスクへの配慮が大きいということではないか。そもそも株安リスクは、自身の肝入り政策である相互関税がきっかけになったものだったが。

米ドルは「トルコリラの二の舞」に本当にならないか?

インフレ懸念が強い中でも、中央銀行に「インフレには利下げが有効」との持論を示し、中央銀行総裁を解任するなど人事への介入を繰り返した最近の代表例はトルコのエルドアン大統領だろう。トルコでは、ハイパー・インフレなどにより通貨の信認が大きく低下する中で、この10年で50円程度から3円台への大暴落となった(図表3参照)。

【図表3】トルコリラ/円と52週MA(2014年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

トルコを巡る状況と似たようなことが、トランプ政権発足後に基軸通貨の米ドルでも起こっている可能性があるわけだ。以上のように見ると、米ドル下落リスクの観点においても、かなり気になるトランプ米大統領の「エルドアン化」ということではないだろうか。