140円割れで米ドル/円下落が一段落したのは「下がり過ぎ」が一因
米ドル/円のこの間の安値は、4月22日に記録した139.8円だ(図表1参照)。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長解任を示唆するトランプ米大統領の発言を受けて、米ドルの信認への懸念が拡大、140円の大台割れとなった。しかし、その後トランプ米大統領がこの発言を事実上撤回に動いたことで、米ドル買い戻しが広がった。

この時、米ドル/円の下落が一巡して反発に転じたのは、テクニカルな要因も大きかったのではないか。この当時、米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率はマイナス7%以上に拡大した。同かい離率は、2000年以降で見ても、マイナス10%以上に拡大したのはほんの数回しかなかった(図表2参照)。つまり、同かい離率がマイナス10%近くまで拡大すると、短期的な「下がり過ぎ」懸念が強くなる。

トランプ米大統領のFRB議長解任発言をきっかけに、米ドル安・円高が加速。一時140円割れとなったが、その中でさすがに米ドル/円の短期的な「下がり過ぎ」懸念も強くなっていた。そうしたタイミングで、トランプ米大統領が解任発言の撤回に動いたため、それが「下がり過ぎ」修正のきっかけとなり、結果的に米ドル/円の下落も一段落したということだったのではないか。
137円割れまで「下がり過ぎ」懸念は強まらないか?=米ドル/円
その後148円台まで反発した米ドル/円だったが、先週(5月19日週)にかけて再び142円台まで下落してきた。139円台を記録した4月22日から1ヶ月以上が過ぎる中で、米ドル/円の短期的な「下がり過ぎ」の評価にも変化が出てきたようだ。
米ドル/円の90日MAは、139円台を記録した4月22日は151.5円だったが、5月23日には148.3円まで下落した(図表3参照)。この結果、4月22日当時は、140円で90日MAかい離率はマイナス7.5%まで拡大したが、足下では同じ140円でも同かい離率の拡大はマイナス5.5%にとどまる計算になる。

ちなみに、90日MAを148.3円とした場合、それを7.5%下回るのは137.1円という計算になる。つまり、4月下旬には、140円割れで米ドル/円の短期的な「下がり過ぎ」懸念が強くなっていたが、足下では同じように「下がり過ぎ」懸念が強くなるのは137円割れと変化しているようだ。
以上のように見ると、4月に140円割れで米ドル/円の下落が一段落したのは、短期的な「下がり過ぎ」も一因だったと思われるが、今回は少なくとも「下がり過ぎ」が理由となって、140円割れで米ドル/円の下落が止まることはなさそうだ。