米ドル安・円高の平均シナリオなら2026年末以降120円割れへ

1998年以降の米ドル/円の主なトレンドは、米ドル安・円高、米ドル高・円安とも5回あった(図表参照)。この中でまずは、米ドル安・円高トレンドについて、それがどれぐらい続き、その中でどのような変動が起こったかについて見てみよう。

【図表】米ドル/円のトレンド(1998年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

過去5回の米ドル安・円高トレンドの継続期間は、最短で1年、最長で4年4ヶ月、平均2年5ヶ月だった。また、この間の米ドルの最大下落率は13~39%で平均は26%だった。以上のことから分かるのは、平均的な米ドル安・円高トレンドとは、2年半ぐらい続き、その中で米ドルが26%程度下落するものということだろう。

仮に、2024年7月の161円から米ドル安・円高トレンドが展開しているとして、それが上述の平均的シナリオで展開するなら、2026年末ないし2027年初めにかけて120円割れに向かうという計算になる。別な言い方をすれば、もっと早く米ドル安・円高が終わり、120円も割れないようなら、今回の米ドル安・円高は平均以下のものだったということになる。

平均を大きく上回った今回の円安161円

では次に、米ドル高・円安トレンドについて見てみる。過去5回の米ドル高・円安トレンドの継続期間は、最短6ヶ月、最長3年8ヶ月、平均2年9ヶ月で、その間の米ドル最大上昇率は、20~66%で平均40%だった。

なお、今回の米ドル高・円安トレンドが2024年7月161円で終了したなら、3年6ヶ月で米ドルが最大57%上昇したことになる。過去の記録を更新するほどではなかったものの、平均よりはかなり長く大幅な米ドル高・円安だったと言えそうだが、その主因はやはり歴史的なインフレを受けた日本以外の世界的な金利急騰ということだっただろう。

それとも、突然、日本経済の衰退化の影響で円安が急拡大したのか。それならなぜ、米ドル高・円安の継続期間も、米ドルの最大上昇率も、いわゆる「アベノミクス円安」を越えるほどではなかったのか。日本経済の衰退化といった構造要因が急に円安を加速化させたとの一部の論調は、以上の観点からも疑問符がつかないだろうか。

それにしても、今回の調査対象の中で、米ドル高・円安の継続期間とその間の米ドル最大上昇率ともに、2024年7月にかけて展開した「歴史的円安」を上回った唯一の例は、2015年にかけて展開した「アベノミクス円安」だった。しかも「アベノミクス円安」は、最後まで円安阻止介入もないままでの終了となった。改めて、今回の「令和の円安」と比較することで、「アベノミクス円安」がいかに異例の円安だったかがよく分かるのではないか。