八潮市で道路陥没事故が発生、老朽化対策待ったなし

2025年1月に埼玉県・八潮市の県道交差点で道路が陥没し、トラックが転落した事故が発生した。下水道管の損壊が原因で、広い地域から下水が集まる合流地点で発生したとみられると報じられている。道路陥没は新たな崩落で穴が拡大している。下水管が腐食し、破損した部分に土砂が流入したことで、地中に空洞が発生したもようである。

今回問題となった下水道管は直径約4.75メートルで、1983年に埋設されたという。損壊が起きたのはさいたま市や春日部市など上流の12市町から集まった下水を、近くの下水処理場に送る下水管だった。県は損壊により、該当する市町に洗濯や風呂などの自粛を呼びかけ、影響は120万人におよぶとされる。

橘慶一郎官房副長官は、今回の事故を受けて1月29日に、国土交通省が全国の下水管理者に同様の箇所の緊急点検を要請したことを明らかにしている。

インフラである下水道管の損壊が多くの国民の生活に影響を及ぼす格好となった。下水道管の老朽化対策など対応が待ったなしの状況となっている。

国交省はストックマネジメントを推進

国土交通省では、長期的な視点で下水道施設全体の今後の老朽化の進展状況を考慮し、優先順位付けを行ったうえで、施設の点検・調査、修繕・改善を行うストックマネジメントを推進している。

国土交通省によれば、2022年度末における、全国の下水道管渠(かんきょ)の総延長は約49万キロメートルで、そのうち標準耐用年数50年を経過した管渠の延長は約3万キロメートル(総延長の約7%)である。これが、10年後には約9万キロメートル(同約19%)、20年後には約20万キロメートル(約40%)と、今後は急速に増加すると予想している。なお、2022年度の道路陥没件数は約2600件と、漸減傾向ではあるが、高水準が続いている。

老朽化に加えて、少子高齢化が進んでおり人手不足の問題もある。こうした中で、ドローンを使った点検が注目を集めている。膨大なインフラを適切に点検・調査・管理するには、管内を点検するドローンなどが有効だ。また、地質の調査、寿命の長い下水道管への更新なども有効となりそうだ。

下水道の維持管理を手掛ける関連企業

関連銘柄をピックアップする。

NJS(2325)

上下水道を軸とする総合コンサル。調査から設計・施工監理まで一貫して手掛けている。下水道関連が売上高の約6割と推計され、官公需が大半を占める。

また、ドローン・ロボティクスを独自開発。管内飛行ドローン「Air Slider」は管路など閉鎖性空間の点検・調査に特化し、管内を飛行しながら撮影。人が管内に入ることなく、早く・安全に点検・調査することができる。このほか、管内点検ロボットなども展開している。

【図表1】NJS(2325):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年2月6日時点)

Liberaware(リベラウエア)(218A)

屋内専用の狭小空間点検ドローンの開発・販売・レンタルなどを展開。空間画像データの3次元解析や加工も手掛ける。災害時生存者の捜索技術、鉄道施設の点検に特化したドローンなどに引き合いがある。2024年11月には神戸市消防局と小型ドローンを活用し、トンネル内での要救助者捜索・救助訓練を実施。安全性の向上に貢献している。

【図表2】Liberaware(リベラウエア)(218A):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年2月6日時点)

積水化学工業(4204)

高機能樹脂などを強みに幅広く事業を展開。下水管の管路更生システム「SPR工法」を手掛ける。下水管の老朽化が進むと道路の陥没や地下水に汚水が浸透するなどの恐れがあるが、こうした古い管路を、道路を掘り起こすことなく蘇らせることができる。具体的には硬質塩化ビニル製の帯を老朽管の内側にらせん状に巻き付け更生管を作り、耐震性や耐久性に優れた管路にリニューアルする。工事は自動で行い、道路を掘らず下水を流したまま施工ができるとしている。

【図表3】積水化学工業(4204):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年2月6日時点)

日本鋳鉄管(5612)

鋳鉄管の大手。上下水道向けダクタイル(黒鉛球状)鉄管に強い。ダクタイル鉄管は組織の中の黒鉛を球状化させることにより、強靭性や耐食性、加工性などの優れた特性を発揮する。上下水道やガスなどの各種管路用として幅広く使われている。同社では地盤の動きに順応できる収縮性と離脱防止機能を備えた耐震管を量産している。ほか、栗本鉄工所(5602)も鋳鉄管の大手。

【図表4】日本鋳鉄管(5612):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年2月6日時点)

日本ヒューム(5262)

下水道用のヒューム管でシェア2割。ヒューム管は下水道や上水道、農業用水や工業用水などを流す管として使われる。ヒューム管メーカーのパイオニアとしての豊富な製品ノウハウを活用し、下水道処理施設などコンクリート管路を主体とした調査・診断・判定事業なども展開している。

【図表5】日本ヒューム(5262):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年2月6日時点)

応用地質(9755)

地質調査の最大手。災害に強いインフラ整備のための調査・設計・計測サービスなどに力を入れている。最新のICT(情報通信技術)を駆使し、インフラの老朽化調査、維持管理システムの構築なども手掛けている。主要顧客は国や自治体、公共研究機関など。

【図表6】応用地質(9755):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年2月6日時点)