土木、建築、農業など…着々と進む社会実装

ドローン(無人航空機)の活用が徐々に進んでいる。2022年、有人地域で目視不要で機体を飛ばすことができる「レベル4」が解禁された。これにより、スタジアムでのスポーツ中継や、写真・映像撮影のための空撮が可能になった。また、市街地や山間部、離島などへの医薬品や食料の配送、さらに災害時の救助活動や救援物資輸送、被害状況の確認などにも活用されてきている。

飛行レベル 操縦範囲 用途
レベル1 目視内での操縦飛行 空撮 橋梁点検
レベル2 目視内での自立飛行 農薬散布 土木測量
レベル3 無人地帯での目視外飛行 輸送の実証実験
レベル4 有人地帯での目視外飛行 荷物輸送 建設現場の測量
レベル3.5 無人地帯(道路や鉄道含む)での目視外飛行 点検 物流

国土交通省ではドローンのさらなる事業化促進のために、2023年12月に「レベル3.5」を新設した。操縦ライセンスや保険加入など一定の条件の下で、従来求められていた補助員や看板設置といった立入管理措置を撤廃。道路や鉄道の横断などが容易になっている。

日本経済新聞では、電力大手やJR東日本が2024年度中に送配電網をドローンの航路として実用化すると報じられている。送電線上空を航行する運行管理システムを近く販売し、電線や鉄塔などの点検を皮切りにEC(電子商取引)の物流や災害状況の確認など用途を広げる。利用できる電力大手の送配電線は全国に130万キロメートル超あるという。

インプレス総合研究所によると、2028年度のドローンビジネスの市場規模は9054憶円で2023年度に比べ2.3倍になると試算。これは年率で18.6%の伸びとなる。発表資料によると、サービス市場では、特に点検、土木・建築、農業などの分野におけるドローンの社会実装が着実に進んでいるとしている。

グロース市場に新規上場したTerra Drone(テラドローン)(278A)

こうした中、11月29日に測量や点検などのドローン関連サービスを手掛けるTerra Drone(テラドローン)(278A)が東京証券取引所のグロース市場に新規上場した。同社はドローン関連のソリューションと運行管理サービス(UTM)を提供しており、ソリューション事業は測量や点検のほか、農業分野に注力している。高度な技術を有し、インドネシアでは5000ヘクタール(東京ドーム1000個分)の農地に農薬を散布するなど、海外の売上高比率も高い。

市場が将来性を期待しているのがUTMだ。高い高度の空では、例えば飛行機は航空管制官が航空交通管理(ATM)システムを使って管制することで安全に航行することができる。低空を飛ぶドローンも、数多く飛ぶようになると、安全面から同様のシステムが必要になる。ドローンだけでなく「空飛ぶタクシー」が実用化すれば、UTMが不可欠になるとみられる。

現状、UTMで世界首位を走っているのが、ベルギーに本社があるユニフライで、Terra Droneは2023年に同社を子会社化した。「低空経済圏」でのビジネス拡大を狙う。

その他のドローン関連銘柄をピックアップ

Liberaware(リベラウェア)(218A)

屋内専用の狭小空間点検ドローンの開発・販売・レンタルを展開。空間画像データの3次元解析や加工も手掛ける。災害時生存者の捜索技術、鉄道施設の点検に特化したドローンなどに引き合いがある。2024年11月には神戸市消防局と小型ドローンを活用したトンネル内での要救助者捜索・救助訓練を実施。安全性の向上に貢献している。

【図表1】Liberaware(リベラウェア)(218A):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年12月5日時点)

ブルーイノベーション(5597)

複数のドローン、ロボットなどを遠隔制御、統合管理するソフトに強みがある。大規模事業所などの点検サービスの比重が大きい。ドローンパイロット管理システムなども展開している。2024年11月15日には、千葉県一宮町で同社のドローン巡回システムを活用した津波避難広報ドローンシステムの導入が決定したと発表。

【図表2】ブルーイノベーション(5597):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年12月5日時点)

ACSL(6232)

国産ドローン専業メーカー。日本初の「レベル4」を実現。現在でもレベル4は同社のみ。飛行データなどセキュリティ対策に優れた小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」を展開。防衛省などへの納入実績がある。

【図表3】ACSL(6232):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年12月5日時点)

セイノーホールディングス(9076)

傘下に西濃運輸。2023年12月11日の「レベル3.5」解禁日に、他社と協業で、北海道士幌町で日本初となる「レベル3.5」でのドローン配送を実施した。

【図表4】セイノーホールディングス(9076):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年12月5日時点)

双葉電子工業(6986)

ラジコン用の送受信機を手がけた技術を活かし、産業用ドローン「SkyBuddy(スカイバディ)」を新たに展開している。輸送力(ペイロード)に優れ、風速15メートル/毎秒にも耐える性能があるという。

【図表5】双葉電子工業(6986):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年12月5日時点)

オプティム(3694)

スマホやPCなど法人向け端末の一括管理サービスを提供。農業分野へ参入し、農業界の課題解決に取り組む。特にドローン活用の農薬散布サービスに注力。決算説明資料では「ピンポイント散布サービスが全国の水稲栽培で急成長。今期散布面積が急拡大し、国内ナンバーワンの農薬散布サービスになる見込み」とある。

【図表6】オプティム(3694):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年12月5日時点)