米ドル/円乱高下の主役は「高市氏」

9月27日、自民党総裁選の1回目の投票で高市氏がトップになり、米ドル高・円安がジワリと拡大し、この間の米ドル高値を更新すると、15時過ぎの決選投票の結果が判明する直前までには146円を大きく越える米ドル高・円安となっていた(図表参照)。

【図表】米ドル/円の15分足チャート(2024年9月27日)
出所:マネックストレーダーFX

この動きは、過去に40円以上の大幅円安をもたらした安倍政権の経済政策「アベノミクス」の継承者を自負し、日銀の追加利上げにも反対姿勢を明確に示していた高市氏の新総裁、さらに新総理就任決定を先取りした反応だろう。

ところが、決選投票の結果は高市氏の敗北。これを受けて、米ドル/円はあっと言う間に143円台へ急落した。以上をふまえると、高市「新総理」誕生を先取りした円売りが、その可能性が消えたことによって円買い戻しに殺到したという為替市場の反応は、「高市ショック」と呼ぶのがやはりしっくりくるのではないか。

この日の米ドル/円の値動きを、石破氏をテーマにした上で考えてみよう。石破氏は、経済政策については岸田政権の路線を継承し、金融政策についても日銀の判断を尊重すると説明してきた。日銀の現在の判断は、金融政策の正常化を進め、状況を見ながら追加的な利上げを検討するというもの。

それを支持する石破「新総理」誕生の可能性が後退したとして、決選投票前に円売りに動いた人はほぼ皆無ではないか。やはり日銀利上げ反対と述べている高市「新総理」誕生を先取りした円売りと考えるのが自然だろう。そうすると、決選投票の石破勝利、高市敗北の結果を受けた円買い戻し殺到も、「石破ショック」ではなく「高市ショック」になるのではないか。

以上、今回の自民党総裁選挙の結果判明を前後した値動きについて、為替市場の立場からの見方について述べてきた。ただこれが、株式市場の立場からすると、金融所得課税などネガティブ要因のある石破氏の勝利を「石破ショック」と呼ぶのは理解できる。また、日銀利上げ反対、円安容認と見られた高市氏ではなく、それらの点で立場を異にする石破氏の勝利を、「石破ショック」と呼ぶのも分からなくはない。

為替市場にとって、岸田政権の経済政策を継承するとしている石破「新総理」誕生は、それ自体が円安や円高をもたらすものではなく、基本的にはニュートラルな要因だろう。ただし、株式市場の「石破ショック」が今後どれだけ続くか次第では、リスクオフが為替市場の新たな材料になる可能性は残っているだろう。