昨日はリスクは互いに打ち消しあうものもあるという話をしましたが、これを相関、もしくは逆相関があるといいます。多数のリスクを併せ持っている時に、逆相関がどれだけあると見積もるかによって、全体のリスクの額は大きく変わってきます。
昨年のロシア危機のときに、いくつかのヘッジ・ファンドが大きな損失をしたのは、この相関係数の見積もりが大きく変わってしまったことによる部分が大きいと思います。即ち、逆相関の関係・度合いは常に一定のものではなく、相場環境などによって変化するものなのです。1,000ドルを持ってカジノに行き、一回10ドルの掛け金でゲームをしていたつもりが、ある時突然知らないうちに掛け金が一回500ドルまで上がってしまっていたようなものです。そこで二回続けて負けたらゲーム・オーバーですね。
モダン・ポートフォリオ理論を構築した人たちが、その理論に足元をすくわれてしまいました。投資はやはり身のほどを知って慎重に行なうのが大切ですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。