52週MAで円安トレンド転換を考える
トレンド転換を判断する上では、52週MA(移動平均線)との関係は比較的「ダマシ」が少ないため参考になる。上昇トレンドと逆行する一時的な下落は52週MA前後までがせいぜい、52週MAを本格的に割れてきた場合はすでに下落トレンドへ転換した可能性が高くなる。
この観点で言えば、先週一時151円台まで急落した米ドル/円だったが、それは未だ上昇トレンド転換と判断するには至らず、あくまで一時的下落の範囲にとどまっていることになる。米ドル/円の52週MAは足下で150円程度であり、それを大きく割れたわけではないからだ(図表1参照)。ただし、クロス円の中には早々と52週MAを大きく割れ始めたものもある。
その代表格がメキシコペソ/円だろう。メキシコペソ/円の52週MAは足下で8.7円程度だが、先週は一時8.1円台まで下落、52週MAを最大で6%と大きく下回る場面もあった(図表2参照)。
NZドル/円はこの間の高値から、先週にかけて最大で10%程度もの急落となった。こうした中で、まだ小幅ではあるものの、NZドル/円も52週MAを割れ始める動きとなってきた(図表3参照)。
メキシコペソやNZドルは、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、対米ドルで一時は大幅な買い越しとなっていた一方で、円は対米ドルで記録的な売り越し拡大となっていた。この2つのデータを合わせると、メキコシペソやNZドルを買い、円を売るという取引は、投機円売り(円キャリー)の代表格だった可能性がある。そうした相場から、円安トレンドの転換を試す動きとなってきたことは、投機円売りが曲がり角を迎え始めている可能性として注目される。
メキシコペソ/円の5年MAかい離率は一時40%を大きく上回るまで拡大した。これは空前の「上がり過ぎ」の可能性を示すものだったが、最近にかけて30%以下に縮小してきた(図表4参照)。メキシコペソ/円の「上がり過ぎ」の修正が急ピッチで起こり始めたと言えそうだ。
それでも、同かい離率が20%を大きく上回っている状況は、経験的にはまだまだ「上がり過ぎ」懸念が強いことには変わりない。さらなる「上がり過ぎ」修正に伴うメキシコペソ/円の下落リスクには、引き続き注意が必要ではないだろうか。