2024年7月3日(水)23:00発表(日本時間)
米国 ISM非製造業景気指数

【1】結果:市場予想・前回結果をいずれも下回り、サービス業の景況感悪化を示す

ISM非製造業景気指数(6月)
結果:48.8 予想:52.7 
前回:53.8

6月の米ISM非製造業景気指数は48.8を記録し、市場予想と前回結果を下回る結果となりました。好不況の分かれ目となる50を2ヶ月ぶりに下回り、コロナ期の2020年5月以来の低水準となりました。

【図表1】ISM非製造業景気指数の推移
出所:米供給管理協会(ISM)、Bloombergのデータを基にマネックス証券作成

【2】内容・注目点: サービス業は需要低迷、インフレ圧力は緩和

【図表2】ISM非製造業景気指数、各項目の結果まとめ
出所:米供給管理協会(ISM)、Bloombergよりマネックス証券作成

図表2の通り内訳をみると、総合指数の主な下落要因は、事業活動・生産の大幅下落(61.2→49.6)と新規受注の下落(54.1→47.3)です。景気の先行指標とされる新規受注は、2022年12月以降30ヶ月連続で拡大を示していましたが、ここにきて縮小圏に落ち込み、サービス業における需要が低下してきていることがわかります。

事業活動・生産と新規受注の落ち込みに対し、在庫指数は 9.2 ポイント低下して 42.9になりました。企業がコスト削減と需要低迷への対応のために在庫を積極的に削減しようとしていることが分かります。

また、雇用は46.1を記録し5ヶ月連続で縮小となりました。なかでも夏季に人員を増やす傾向にある宿泊・飲食サービスや芸術・娯楽・レクリエーションなどの業界で減少が報告されています。

一方で、総合指数を構成する4要素(事業活動・生産、新規受注、雇用、入荷遅延)のうち、入荷遅延だけが50を上回りました。入荷遅延指数は構成指数のうち唯一の反転指標で、この指数が上昇するということは、サプライヤー(仕入れ先)による配送・納入がより「遅延しつつある」ということを意味します。旺盛な需要に応えられず入荷が遅延している場合や、サプライチェーンの混乱等により上昇しますが、調査回答者は、今回のサプライヤーの納品の遅れについては、需要の増加ではなく、主に輸送上の課題によるものだと指摘しています。

そして今回、支払価格指数は前回5月の58.1から6月は56.3に低下しました。依然として高水準にあるものの、サービス業におけるインフレ圧力は緩和されつつあることが分かります。

【図表3】ISM非製造業支払価格指数の推移
出所:米供給管理協会(ISM)、Bloombergよりマネックス証券作成

次に企業担当者のコメントを見ると、今回はインフレやコスト増に対するコメントが目立ちました。原油価格が6月中に上昇したことが影響していると見られるほか、依然として続くパナマ運河とスエズ運河の問題も輸送コスト増に寄与していると考えられます。

【3】所感:サービス業の景況感悪化で年内利下げ期待高まる

サービス業の景況感が予想以上に弱かった結果を受け、米金利は低下で反応しました。金利低下に対し、米株式市場はS&P500株価指数とハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が史上最高値を更新しました。一方、ダウ平均はほぼ横ばいとなりました。この日は短縮取引であったこと、翌日が独立記念日で休場であること、また、その翌日には雇用統計の発表が控えていることから、様子見の動きになったとみられます。

1ヶ月でトレンドが形成されるわけではないものの、ここ3ヶ月で2度の景気縮小圏となっており、米国経済を支えてきたサービス業も徐々に疲弊しつつあることが分かります。同日公表されたADP雇用者数や新規失業保険申請件数でも、労働市場の予想以上の悪化が示されました。各種指標からインフレ鎮静化の兆しも見え始めており、FRBが年内に政策金利を引き下げる環境が整ってきていると言えます。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐