1998年に比べて協調介入受けた円高への反転が小幅の今回
日米の通貨当局は2026年7月末に円買いの協調介入を行ったと発表した。協調介入により、米ドル/円は163円台から155円台まで最大で5%以上の急落となった(図表1参照)。この日米協調の円買い介入は1998年6月以来のこと。ただし前回の協調介入と比べると、これまでのところ円高への反転はかなり小幅にとどまったと言えそうだ。
1998年の日米協調円買い介入は6月17日に一度だけ行われた。この時、米ドル/円は146円台から3営業日目には133円台まで急落した(図表2参照)。最大下落率は約9%に達したのだった。仮に今回の協調介入で同程度米ドル/円が急落したなら150円割れになる計算だった。以上のように、同じ協調介入でありながら、今回と1998年のそれではかなり差があったと言えるだろう。
1998年は2千億円、今回(2026年7月)は10兆円超=日本の介入額
協調介入をきっかけに大きく円高へ反転した1998年、それに比べるとこれまでのところ円高への反転は小幅にとどまっている今回。協調介入に投入した「費用」は、1998年のそれに比べて今回の方が圧倒的に大きかったようだ。
財務省資料によると、1998年6月17日に日本の通貨当局が行った米ドル売り・円買い介入は2312億円だった。これに対して今回、当局は2026年7月末以降2~3営業日で米ドル売り・円買い介入を行い、その総額は10兆円以上に達したと見られている。
1998年6月の日米協調介入は、日本の介入額が2千億円程度で短期間に9%程度の米ドル/円の急落が実現したのに対し、今回は10兆円以上使いながら、これまでのところ米ドル/円の下落は最大でも5%程度にとどまっている。前回に比べて今回の日米協調介入は、円安是正の「費用対効果」の悪さが目立つがその原因は何か。
1998年は米ドル売り、今回はユーロ売り=米国の協調介入
協調介入の手法の違いの影響はあっただろう。1998年の場合、米国は米ドル売り・円買い介入を行ったのに対し、今回は米ドル売りを行わず、ユーロ売り・円買い介入での協調介入参加となった。これが、対円での米ドル下落率が1998年に比べて小幅にとどまった一因の可能性はあるだろう。
円安是正のための米国の協調介入参加が注目されるのは、米国にとって自国通貨の米ドル売りは事実上無制限に可能だということがある。ユーロ売り介入となると、米国が保有するユーロには限りがあるため自ずと限界があるだろう。ただし、そういった技術的な問題とは別の影響が大きいように感じられる。
最大の原因は根深くしみ込んだ円安マインドか
1998年は、大手の金融機関の経営破綻が相次ぐ中、日本の金融危機が懸念される状況にあった。そういった中で「円安はこのまま止まらず近い将来の200円も現実味を帯びてきた」という見方も増えていた。この点においては最近も似たような風潮がある。
2022年以降繰り返される円安、そして「歴史的円安」が叫ばれる中で、最近の円安マインドの強さは、すでに日本の金融危機が懸念された1998年以上にしみ込んでおり、それが1998年以上に用意周到に準備され、パワーアップした日米協調介入でも円高への反転効果がこれまでのところ限られている最大の理由ではないか。
ただし、日米の通貨当局も、この「根深くしみ込んだ円安マインド」を簡単に変えるのは難しいことを理解しているようだ。その上で、この円安マインドを変えるためには、事実として円高へ戻ったことが確認できるように、米ドル/円の水準を変えないことにはだめだと考えている。この先の焦点は、そうした当局の目指す形が実現できるかということだろう。
