世界中で高まる緊張

今回はあらためて防衛関連株について述べてみます。

5月20日、台湾の新しい総統に民進党の頼清徳(ライ・チンドォー)氏が就任しました。頼総統は、これまで中国からの独立を強く主張してきた経緯があります。就任に際して、どこまで中国からの独立問題に踏み込んだ内容を演説に盛り込むか、世界中が注目していました。

頼氏はこれまでの強硬な考えは封印し、中国と対等の立場を強調する、穏やかな内容に納められました。しかしそれでも中国政府は神経をとがらせています。

頼総統の演説の中にあった「台湾は中国に隷属しない」とのくだりにすかさず反応し、演説直後の5月23日より、中国人民解放軍は台湾をぐるりと取り囲む形で大規模な軍事演習を開始したのです。台湾有事の際に台湾海峡はどのように封鎖されるのか、中国軍の迅速さと展開力を世界に見せつける形となりました。

私たちが日々暮らす現代の国際社会には、地政学上の大きな火種が3つ存在すると言われています。中央アジア(ウクライナ、アゼルバイジャン、アルメニア)、中東(イスラエル、シリア、イラン)、そして東アジア(台湾、北朝鮮、中国)の3つです。

そのうちの2つ、中央アジアと中東では、すでに戦端が開かれています。簡単な解決策は見出せず、かなりの長期化が予想されます。

世界最大の経済大国である米国と中国が、太平洋をはさんで対峙しています。先端テクノロジーを巡る貿易問題、南シナ海・東シナ海の海洋権益、ウイグル・チベット、香港をめぐる人権問題、そして台湾問題。米中間の政治・経済・軍事面での競争が一段と激化しています。

防衛関連予算は6.8兆円に

日本ももちろん他人事では済まされません。西側自由主義陣営の一員として、中国の軍事的拡張政策に直接さらされています。日本の防衛費は長らくGDP(かつてはGNP)比1%の上限が定められていました。それが2013年度より増額傾向が顕著で、2016年度には初めて5兆円の大台を突破しました。

2023年度にはそれが6.8兆円へと増大しており、名目GDP(572兆円、2023年度)に占める割合は1.2%に達しました(いずれも当初予算ベースの数字)。今後もますます増大することが予想されています。

国際秩序は大きく変化しており、自由で開かれた経済・社会を支える西側陣営の一員として、国際社会の秩序維持およびそれに伴う防衛軍事支出の増大は避けることのできない努めと考えられます。

以下に防衛軍事に関連する企業を挙げてみます。

産業のすそ野広い防衛関連4銘柄

三菱重工業(7011)

日本最大の総合重機メーカー。川崎重工業(7012)、IHI(7013)とともに日本の三大重工業の一角を形成。戦前は「戦艦武蔵」や「ゼロ戦」を設計・製造。現在も火力発電用ガスタービン、原発、造船、航空宇宙、プラントなど幅広く供給しており、中でも防衛機器に関しては戦闘機、ヘリコプター、戦車、装甲車、潜水艦、巡視艦、地対空誘導弾システム「パトリオット」を製造する。2024年度よりスタートした新しい3ヶ年の中期経営計画では「GTCC(ガスタービン)、原子力、防衛」の3事業を重点に掲げている。

【図表1】三菱重工業(7011)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月13日時点)

ダイハツディーゼル(6023)

ダイハツ工業のエンジン部門が分離して誕生した。現在も筆頭株主がダイハツ工業だが事業上の関わりは少ない。船舶用ディーゼルエンジンが収益の中心で、国内外で高いシェアを有する。世界的に環境性能の高い船舶の需要が高まり、コンテナ船、自動車運搬船の新造船が活況。船舶用ディーゼルエンジンの出荷が伸びる。エンジン納入後もメンテナンスで継続的な収益が得られ、前期は15年ぶりに最高益を更新。受注残も2年分を抱える。国内トップシェアを活かして防衛省向け船舶エンジンの納入も増加すると予想される。2025年5月に「ダイハツインフィニアース」に社名変更の予定。

【図表2】ダイハツディーゼル(6023)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月13日時点)

 日本アビオニクス(6946)

1960年に米ヒューズ・エアクラフトと日本電気(NEC)(6701)との合弁会社として設立。ヒューズ・エアクラフトから導入した技術で自衛隊向けの自動警戒管制組織を開発。現在も売上げの6割強を防衛省向け製品が占める。現在、海上自衛隊が運用する護衛艦48艦、潜水艦22艦、掃海艦艇21艦のほとんどが同社製の艦船・潜水艦用指揮管制システムを搭載している。そのほかにも、陸上自衛隊向けに対空戦闘指揮装置、航空自衛隊向けの自動警戒管制システムを納入。防衛予算の重点配備によってさらに売上げ、利益は増大することが見込まれる。

【図表3】日本アビオニクス(6946)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月13日時点)

 FFRIセキュリティ(3692)

純国産でサイバーセキュリティの技術研究・開発を行う、ほとんど唯一のセキュリティ企業。世界トップレベルのセキュリティ技術を有する。近年、ロシアや北朝鮮など国家的な関与が疑われるサイバー攻撃が急増しており、通信システムや重要な社会インフラへの純国産のセキュリティが喫緊の課題である。同社のセキュリティシステムは将来起こり得るサイバー攻撃の脅威をあらかじめ予測して対処することが特徴。防衛省からのセキュリティ案件の受注も大幅に伸びている。

【図表4】FFRIセキュリティ(3692)の週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年6月13日時点)